ホテル業界でのマネジメント経験を活かし介護業界へ

――水野さんのご経歴を教えてください。

新卒でホテルマンに憧れ、ホテル業界に就職しました。
ホテル御三家の格式のあるホテルでしたので、徹底的に国際儀礼、おもてなしの心を学ぶことができました。その後、ホーム長としてチャーム・ケア・コーポレーションに転職しました。
入社して15年になります。

ホテルと介護という異業種ですが、ホスピタリティ・サービスの部分では共通点があると感じていたんです。
そこで、介護業界のサービス向上に、今までの経験を十分に活かせると考え転職を決意しました。

オープニングスタッフとして、前職でのマネジメント経験を評価され、無資格・未経験ながらご縁がありホーム長として採用していただきました。
その後、介護事業部の課長職としてホーム長の運営・管理のサポートをしたのち、1年半前に労働組合を立ち上げ労働環境の改善を目指して働いています。

――転職の際、チャームケアを選ばれた理由を教えてください。

チャームケアは「介護は究極のサービス業」と掲げており、介護業界他社よりも接客業としての接遇、立居振舞を大切にしています。
「真の質の高いサービスを提供したい」という理念を伺い、介護業界の中でもチャームケアに入社を決めました。

はじめは右も左もわからず、失敗も含めさまざまな苦労もしましたね。

入社時は無資格・未経験であっても、ホーム長という立場なので、医療・介護の専門的な知識を持ったスタッフたちをまとめなくてはなりません。
的確な判断を下すためにも、入社してから介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士の資格を取得しました。
学生の時以来で、しかも働きながらの勉強でしたので、時間をつくるのに工夫しましたね。
私でも合格できましたので、皆さんならきっと大丈夫だと思いますよ。

大変ではありましたが、そのおかげで自分が成長できましたし、それが会社の成長にもつながればという思いがありました。
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会社の発展と共に待遇も向上させていきたい

――労働組合で働かれることになったきっかけを教えてください。

チャームケアが東証一部上場企業となり、従業員の待遇や福利厚生も一部上場企業にふさわしくあるべきだと考えたことがきっかけです。
スタッフの成長が会社の成長・発展につながるので、労使協調で働きがいのある職場環境を作っていきたいと考えています。

今後さらに事業展開していく上で、人材を「人財」として捉え、最も大切にしていかなければなりません。
待遇・処遇改善によって、安心して働ける環境を作り、会社が人を育成し、貢献できるような人材に育ってほしいという思いがあります。

現在は労働組合のUAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)に所属しております。

NCCUは介護業界や関連事業の労働組合で、介護従事者等の労働条件改善と社会的地位の向上のために活動している労働組合です。
NCCUは介護業界で働く仲間の職業別労働組合であり、大規模組織ですので、チャームケアだけではできない政府などへの要請活動なども大きな強みです。

私はNCCUの中の近畿総支部に出向という形でお世話になっています。
現在、85,000名ほどの組合員がおり、多数の法人が加盟しています。その「法人分会」の中で、チャーム・ケア分会 分会長という肩書です。

労働組合とは、会社と労働者が対等であるための組織

――労働組合について詳しく教えてください。

一般的に言うと、労働者が労働条件や賃金の改善を会社と交渉するために結成する組合です。
労働者には団結して会社と交渉する権利が憲法で保障されています。

会社の規模が大きくなるに従い、労働環境の改善が遅れがちになっていると感じていました。
本来は、会社の成長と比例して、労働環境も整えていくべきだと考えています。

労働組合は、会社にとって有利な状況ばかりにならないよう、協議・調整をしていく役割を担っています。
何事も、一方だけで物事を進めていくと、もう片方への不利益な状況が生まれがちなので牽制の役割もあります。

従業員ひとりでは、雇用関係にある会社に意見を言いにくいですよね。
なので、労働組合に相談、あるいは意見交換をしてもらうことで、労働組合を通して会社と平等な立場で協議できるような仕組みになっています。
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スタッフからの意見を取り入れた処遇改善活動

――労働組合での仕事内容を教えてください。

職場環境の点検や、処遇改善のための活動が主な業務内容です。
現場にいる介護スタッフの意見をしっかり聞くため、月1~2回職場会議・分会役員会議を開催し、ホームでの課題や問題点を挙げてもらい意見交換や協議の内容のコンセンサスを図っています。

職場会議には各ホームに2名いる職場委員に出席してもらっています。
職場委員は、ホーム長と統括リーダーが多く、責任者クラスの方々が加わることで団結力が増しますね。

他に多いのは、賃金の改善や福利厚生の見直しなどです。
また、介護保険制度は定期的に改定されますが、労働に関する法律も働き方改革の推進でどんどん改定されていきますので、労働条件が就業規則に適合しているのか、改定が必要なのかを確認しています。

慢性的に残業自体が多くならないよう、毎月、残業時間の要因など詳細を労使で把握して、それに対しての改善を求めていくこともしています。
また、サービス残業はあってはならないので、労働組合の存在が抑止力になればと考えています。

有給休暇の取得日は本人の意志に基づかず会社が一方的に指定していないか、全員が年に5日以上の有給休暇を取得できているのか確認するなどの業務もあり、常にコンプライアンスの順守を求めています。

労働組合の改善事例|制服の見直し

――具体的には、どのような意見があるのでしょうか?

昨年、職場会議の意見や要望で最も多かったのは、制服に関する意見でした。

現在の制服もスタイリッシュで良いものなのですが、介護をするにあたって、動きにくいなどの意見が多く挙がりました。
介助は身体をうまく使いながら行いますので、動きやすさを重視し、伸縮性に優れた素材にするなど見直してほしいということでした。

労使協議会での協議を経て、2020年「制服の見直しプロジェクト」を立ち上げることになりました。
全スタッフの制服見直しには時間も費用もかかり、かなり大掛かりなプロジェクトのため、会社と何度も協議を重ねてきました。

プロジェクトでは、月2回程度の会議や、従業員全員に対するアンケート調査で皆様に意見を伺いながら、現在も慎重に取り組んでおります。
順調に進めば、2022年1月頃に新しい制服が導入できる予定です。

日々ホームで介護職として働いていたら、長期間に渡る交渉や話し合いを個人でまとめるのは難しいでしょう。
このような見直しや改善こそ、労働組合の役割のひとつです。

組合員になるメリットも多い

――福利厚生について教えてください。

労働組合は、みなさんから組合費をいただいて運営されています。

万が一、怪我や病気などで休んでしまったときなど、かなり幅広く共済金を受給することができるんです。
結婚・出産などのお祝い金、被災時のお見舞金も申請できますし、レジャー施設や宿泊施設などでの割引等もあるので助かります。
皆で支えているということですね。

共済の保険も安い掛け金で加入できるというメリットがあったり、現在のコロナ禍ではオンラインでコミュニケーションや健康に関するセミナー、勉強会やヨガ体験なども実施されています。

労働組合のみなさんにお渡ししているNCCU共済 生活応援ガイドブック「ライフ&レジャーガイド」の冊子は各ホームにも置いていますので、内容を確認してぜひ活用してほしいですね。

――社員の方はみなさん組合員なのでしょうか?

はい、ユニオンショップ制といい、会社幹部に近い管理職未満の従業員は必ず労働組合に加入していただいています。
新入社員の方は不安なこともあるかと思いますが、何かあれば労働組合に相談くださいね。
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悩んだときは労働組合を頼ってほしい

――仕事をする上で大切にされていることを教えてください。

働いていて感じるのは、コミュニケーションで解決できることは多いということです。
一度うまく進まなくても何度も協議していく粘り強さも大事にしています。
ホームで働く介護スタッフはなかなか時間がとれないので、労働組合が代わりに交渉していくのです。

どんな職場でも、ハラスメント関連や疑問に思うことなどを上司に相談しにくいですよね。
そんなときに、労働組合は第三者的立場で相談しやすいと思うので、しっかりとお話を伺っていこうと心掛けています。
お話を聞いたあと、スタッフから「お話を聞いて頂き、アドバイスありがとうございます。すっきりしたので、明日からも頑張ります」と言ってもらえたときはとても嬉しく感じますね。

そうは言っても、労働組合に相談するのも勇気はいると思います。
ですが、一人で考えるとなかなか答えが出ないこともあるので、ぜひ労働組合を頼ってほしいです。
日々気持ちよく働いていただくためにも、早めに相談してくださいね。
私自身、介護現場もホーム長も経験しているので、的確なアドバイスができると自負しています。

一度相談していただいたあと、もう一度別の相談にこられる方も多いですよ。
決してひとりでは悩まずどんどん相談してほしいですね!

働きたいと思ってもらえる企業を目指して

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――今後の目標を教えてください。

「介護業界のリーディングカンパニーを目指したい」とよく社長が言われますが、さらに介護業界以外の企業も含めたリーディングカンパニーを目指していけたらと思っています。

同時に、働きがいのある職場環境を整え、チャームケアで働きたいと思ってもらえる、憧れてもらえる企業を目指していきたいですね。

さらには、介護従事者等の社会的地位を向上していきたいです。
ひとつの会社として生産性の向上など努力を続けていますが、国の制度が変わらないと処遇改善にも限界があります。
介護報酬は介護保険制度に左右されるため、NCCUとして介護報酬や制度改定の要請を行っています。
昨年、50万人署名活動を行い厚生労働大臣に提出しました。
まさに、組合員の団結力の結集ですね。

そういった活動を通して、チャームケアだけでなく日本全国の介護従事者等の仲間のためにも、業界全体の処遇を改善していきたいですね。

――制度の改定について詳しく教えてください。

介護報酬の改定は3年に1度実施され、2021年度は全体で0.7%のプラス改定につながりました。
また、コロナ禍で緊急事態宣言が発出されているように、医療崩壊が叫ばれる中で介護も崩壊の危機に直面しています。

高齢者の方の感染リスクが高いということは、働いているスタッフの感染率も当然高くなります。
みんな、ご入居者様の命を預かるという責任感から、危険を顧みず真摯に働いているんです。

そこで昨年、NCCUから厚生労働省へ、介護従事者等に特別手当を支給いただけないかという要請書を提出しました。

結果、金額でいうと5~20万円の慰労金の支給が初めて決定されました。
もちろん、チャームケアだけでなく、全国の介護職従事者等の仲間に対してですので、総計では何千何百億という支給になります。

何もしなければ何も変わらない。
環境を変えていくには誰かが行動しなければ始まりません。
今回はそれが労働組合だったわけです。

新卒・学生さんへのメッセージ

――新卒・学生さんへのメッセージをお願いします。

好きな言葉があります。
「夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ」
「失敗しても後悔しない。後悔するとしたら、挑戦しなかった時だろう。」


何事も行動を起こせば変えられないものはないと思っています。
為せば成るという気持ちが大事ですね。

私自身、未経験の業界で苦労もありましたが、チャームケアの温かさや、社長の熱意や想いに共感できるからこそ、ここまでくることができました。

人生誰でも幾たびか苦労、失敗することがあるかもしれませんが、失敗しない人はいません。それは失敗ではなく経験でしょう。
その経験を次に活かすことが大切だと知っておいてほしいですね。

最後に、労働組合は皆さんと共にあります。
いつでもサポート致しますので、お気軽にご相談下さいね。
会社は皆様に大いに期待していますし、また、皆様の期待に応えてくれる会社であると思います。
ぜひ、一緒に頑張りましょう!

――ありがとうございました!

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