「落薬」とはお薬が落ちてしまうこと

落薬とは、処方されたお薬を開封してから口に入るまでの過程で、何らかの原因で落ちてしまうことを指します。

お薬が床などに落ちることで、ご入居者様が薬を服用できない状態となります。
どちらかというと、在宅介護よりも、入居系施設でよく使われる用語です。

状況はさまざまで、すぐに気が付くこともあれば、お薬を発見した時点で「誰が・いつ飲むべき・何の薬か」が分からない場合もあります。

落薬は健康に関わる危険な事故

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落薬は危険な介護事故として扱われます。

なぜなら薬を服用できないことにより、病状が悪化する、体調が悪くなるなどの問題が起こる可能性があるためです。

健康維持のため、ご入居者様に正しくお薬を飲んでもらわなければいけません。

また、落とした薬を翌日の分などから補填して飲む場合、次回余分に処方してもらうための費用をご入居者様が負担しなければならないこともあります。

落薬のヒヤリハット事例

ではどのような状況で落薬が起こるのでしょうか。
具体的な事例を挙げていきます。

事例1)
ご入居者様が薬袋を破った際に、薬がこぼれ落ちてしまった。

事例2)
介護スタッフが服薬介助をしようとした際に手が滑り、薬を落としてしまった。

事例3)
ご入居者様が服薬した際にむせてしまい、咳と共に薬が口からこぼれおちてしまった。

事例4)
ご入居者様が服薬を拒否されており、服薬介助の際にご入居者様が意図的に薬を落としてしまった。

ご入居者様自身が落としてしまう場合、介護スタッフが落としてしまう場合など、様々な状況で起こる可能性のある事故です。

落薬が起きたら迅速な報告を

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落薬を確認したら、すぐに報告することが最も大切です。

まずは上司、看護師に報告し、翌日の分から補填するなどの判断を仰ぎましょう。

時間が経つと、薬の文字が溶けて消えるなどの理由から「いつ・誰が飲む・何の薬か」を判断することが難しくなります。

自分が落としてしまった場合も、第一発見者となった場合も、迅速に報告することで重大な事故になる前に防げる可能性が高くなります。

そのためには、担当した、または発見した介護スタッフだけが責任を負う状況を作らないことも必要です。

落薬に関わったスタッフだけに業務負担がかからないよう、下記のような配慮をすることで、報告しやすい環境を整えましょう。

・書類作成時間をきちんと確保する
・再発防止策を全員で検討する
・ミスを責めることはしない


チャームケアでは、事故やミスもきちんと共有・反省し、次回に活かすための体制を整えています。

※実際に落薬を経験した先輩スタッフの記事はこちら↓

落薬を防ぐための対策

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チャームケアでは、落薬を防ぐために社内ルールを定めて対策をとっています。

・発生時には事故報告書を作成し、社内で共有することで再発防止に努める
・介護度によって、観察が必要な場合は飲み込むまでをきちんと観察する
・誰がいつお薬を飲まれたかチェック表で管理する
・ご入居者様のご様子を見て、薬の形状の変更を主治医や薬剤師に相談する
・お薬がお口の中に残っていない事を確認する


全員が「落薬はあってはならないこと」という共通認識をもち、事故防止に努めています。

また、落薬が発生した際は、体制やルールの見直し・改善を行っています。

ご入居者様の意志を尊重しつつ落薬事故防止を

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ここまで、落薬の危険性やヒヤリハット事例などについてご紹介してきました。
落薬を防ぐための対策は、きちんと観察する、複数の段階でチェックするなど、さまざまな方法が挙げられます。

ですが、介護度が低く、服薬の観察を望まないご入居者様もいらっしゃいます。
自立支援の観点では、ご自身でできることに対して介護スタッフが過度に介入することも望ましいこととは言えません。

できるだけご自身でお薬を飲みたいという意志も尊重しつつ、落薬事故を減らさなければなりません。

そういった介護ゆえの難しさもありますが、ご入居者様のお気持ちとのバランスを保ちつつ、事故を防いでいきたいものですね。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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