AIの定義とは?

技術の進歩が目覚ましい「AI」について、今一度確認しておきましょう。
AIとは、Artificial Intelligenceの略称で、人工知能と訳されています。AIは大量のデータをもとに学習・パターン化して、その結果から判断や予測を行うコンピューター技術です。

現在では、AI技術が分野を問わず、幅広く活用されています。
株価予測や迷惑メール判定に用いられるデータを分析してパターン解析をする機械学習や、画像認識・自動運転に用いられる人間の脳の神経回路をまねて学習するディープラーニング、テキスト・画像などを新しく作り出す生成AIなどが有名です。

スマートフォンには、質問に答えてくれる音声AIや、文字入力の予測変換など、実に多くのAI技術が活用されており、私たちの生活にAIが溶け込んでいることがわかります。
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介護業界が抱える課題

AI技術は既にさまざまな業界で導入されており、介護業界でも必要性が重要視されています。介護業界が抱える課題を解決するために、AI技術がどのように役立てられるのかを確認しましょう。

介護難民の増加傾向

近年、介護が必要であるにも関わらず、十分な介護を受けられずにいる「介護難民」の増加が問題となっています。

特別養護老人ホームを例に挙げて、確認していきます。東京都高齢者福祉施設協議会が公表している「令和6年度 東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査報告書」では、東京都内の要介護3以上の待機者数は約43,000名となっており、十分な介護が行き届いていない現状が読み取れます。

特別養護老人ホームだけをピックアップしても、これだけの待機者数がいるため、介護サービス全体ではさらに数が大きくなると予想されます。

※出典:令和6年度 東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査(東京都高齢者福祉施設協議会)

介護サービス需要の高まり

内閣府が発表した2025年度の高齢社会白書によると、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は約29%、一人暮らし世帯における65歳以上の高齢者の割合も年々増加傾向にあることが報告されています。

将来的に見ても、介護サービスの需要は高まる一方です。介護施設の安定運営や介護職不足を打開する手段としてのAI活用に、注目が集まっています。

※出典:令和7年版(2025年版)高齢社会白書(内閣府)

介護職の人材不足

介護サービスの担い手である、介護職の人材不足は深刻です。
厚生労働省の発表では、第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、介護職員の必要数を集計したところ、2026年度には約240万人が必要と推計されています。2022年度の介護職員数約215万人と比較すると、現時点では約25万人もの不足が見込まれているのです。

介護業界というと、「給与が低い」「仕事が大変」といったネガティブなイメージを持たれがちです。
しかし近年では、AI技術を取り入れた介護機器の導入や、職場環境の改善、給与水準の見直しなどに積極的に取り組む企業も増えてきました。
こうした取り組みによって、介護職に対するイメージも少しずつ良い方向へ変わりつつあります。

※出典:介護職員数の推移(厚生労働省)
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AIの活用例と介護職のメリット

介護の現場では、積極的なAI活用が行われています。実際の取り組みを通して、介護職にどういったメリットがあるのか、確認していきましょう。

データの自動化による業務効率の向上

AIの導入により、ご入居者様の健康状態や介護サービスの詳細など、データ管理の自動化が実現しました。紙ベースではなくクラウドで管理することにより、大量のデータの一元管理が可能になりました。

介護記録や看護記録も、必要なタイミングですぐに記録・確認できるため、事務作業にかかる時間も大幅に短縮されています。さらにチーム内の情報共有もスムーズになり、引き継ぎにかかる時間も削減されるなど、業務効率が飛躍的にアップしました。

AI技術により、ケアプラン(介護計画)の自動作成が可能なシステムも登場しています。ご入居者様ごとに個別性を考慮する必要があるため、これまでケアプランの作成には時間を要していました。システムを利用することで、業務負担が作成されたケアプランのチェック・微修正のみとなり、大幅な時間の短縮につながっています。

また、介護職員のシフト作成においても、AI技術を搭載したシステムを使用する施設や事業所が出てきました。各スタッフの希望や勤務時間、日数、必要人数などをあらかじめ入力しておくことで、シフトを自動作成してくれる優れものです。

シフトを1から作成する必要がなく、出来上がったシフトのチェックや微修正でシフト作成が完了するため、業務負担が圧倒的に軽減されました。マネジメントサイドでも、AIが業務効率の向上に寄与している事例です。
さまざまな業務の効率化が進んだことで、介護職員はご入居者様と向き合う時間が捻出でき、ご入居者様の満足度上昇にもつながる好循環をもたらしています。

※介護職の未来について、以前特集した記事はこちら
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介助業務負担の軽減とご入居者様の健康サポート

AI技術は、ご入居者様の健康管理や安全性の確保にも役立てられています。

睡眠時のバイタルセンサーは、睡眠の状態を自動で測定できるため、ご入居者様の健康管理に一役買っています。また、エアマットレスタイプの自動体位変換器は、ご入居者様の体重移動を自動感知し、体位変換をサポートしてくれる優秀な機器です。

これまでご入居者様の自己申告でしか把握できなかった睡眠の状態を、正確にデータで測定できるようになったり、介護職が定期的に訪室し、体位変換を行っていた介助業務にかかる時間を削減できるようになったりと、AI技術はご入居者様と介護職の両者をWinWinに導きます。

人材不足を補う各種ロボットの活用

介護の現場では、すでにさまざまなロボットが活躍しています。

ご入居者様のお食事を運ぶ配膳ロボットや、ベッドから車椅子への移乗や立ち上がる動きをサポートする移乗支援ロボットが代表的です。
歩行訓練やリハビリ時に使用される歩行支援ロボットは、筋肉が動くときに発生するわずかな電気信号をキャッチして、足の動きを支援するAI技術が搭載されています。

厚生労働省の調査では、2023年度時点で全国の介護施設の約6割以上で何らかの介護ロボットの導入もしくは導入が検討されていることが明らかになっています。
導入には、まとまった費用がかかりますが、人材不足が危惧されている介護職の代わりを担う活躍が期待されています。

AI技術を駆使した介護ロボットの力を借りながら、介護職はご入居者様とのコミュニケーションの時間を大切することで、信頼関係を深めることもできます。

※DX化と業務改善に取り組んだチャーム四條畷の記事はこちら
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AI導入における課題

AI技術の導入は、介護業界にとって必要不可欠となっていますが、いくつか課題も抱えています。問題点を一つずつ確認していきましょう。

導入予算の確保

前項で触れた介護ロボットやAI技術を搭載したシステムは、導入コストやランニングコストなど、規模の大小によって差はあれど、あらかじめしっかりと予算を確保しておく必要があります。

ロボット技術の介護利用については、国も支援に積極的です。
2024年度の予算には「介護テクノロジー導入支援事業」が組み込まれています。移乗支援や入浴支援など、経済産業省と厚生労働省が定めた「ロボット技術の介護利用における重点分野」に該当する介護ロボットや、タブレット端末、介護・勤怠ソフト、その他ICTリテラシーの習得に必要な経費等を対象として、上限を設け補助金を支給しています。

補助金を活用することで、導入コストの負担を上手に軽減することが可能です。また、目先の負担にとらわれがちですが、人的コストの削減や業務効率化など長期的に考えた場合のメリットも考慮したうえで、導入を検討することも大切です。

※出典:介護テクノロジー支援事業の拡充(厚生労働省)

AI技術の導入にあたっての適応とルール作り

長く介護職に携わってきたスタッフは、介護ロボットに介助業務を任せることに不安を感じるかもしれません。また、ご入居者様にとっても、ロボットに介助してもらうのは抵抗がある可能性があります。

介護ロボットやAI技術の導入がどのような効果をもたらすか、どれくらい正確性が担保されているかなど、不安要素を一つずつ説明・確認し、納得感を持って導入を進めることが成功のポイントになるでしょう。
あれもこれもと一度に導入するのではなく、段階的に進めることも抵抗を少なくする効果が見込めます。

また、新しいシステムを使うにあたっては、研修プログラムやカリキュラムを策定し、1日でも早く、ユーザーに慣れてもらう必要があります。場合によっては、使用ルールなどを決めることもあるでしょう。

浸透するまでは時間と労力がかかりますが、AI技術の目覚ましい進化を介護業界に取り入れることは、課題解決の一助になります。
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AIがもたらす介護職の未来

介護業界は、施設や事業所によってAI技術の導入に差がある点も課題の一つです。紙ベースでの記録を主流としていたり、マンパワーのみで介助業務を行っている事業所も少なくありません。

一方で、AI技術を活用した介護ロボットやICT等の介護テクノロジーを活用した、介護サービスの向上や介護職の業務負担軽減については、経済産業省と厚生労働省が一丸となって積極的に進めている背景もあります。

チャームケアは、介護業界の先陣を切って、AI技術の導入に力を入れてきました。全介護スタッフへのタブレット端末・インカムの配布、各種見守りセンサーの導入、配膳ロボットの活用など、その都度ご入居者様のご理解を得ながら進めています。
AI技術の活用は、ご入居者様の安心と介護職の働きやすさにもつながるでしょう。

今後も人手不足が予測される介護業界には、AI技術の活用が急務となっています。AI技術を上手に取り入れることで、介護職は人の手が必要な業務に、より一層力を入れることも可能です。

介護職・ご入居者様、そしてご家族様、双方の意識改革を進めながら、より良い未来のためにAI技術を積極的に活用していくことが重要です。

※出典:「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました(厚生労働省 報道発表資料)

※介護現場のIT化の重要性についての記事はこちら

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