認知症の方に声かけをする意義

認知症には、様々な症状があります。物忘れがひどくなったり、疑い深くなったりする他、無気力になるような症状もあります。
話しかけてもボーッとして反応があまりないこともありますが、決して声が聞こえていないというわけではありません

高圧的な声かけをすると、認知症の方を怖がらせてしまうリスクがあります。また、間違いに対する冷たい指摘で傷つけてしまう可能性もあります。

声かけは、認知症のケアにおいて重要なコミュニケーションです。声かけの内容次第で、認知症の方の生活環境が変わると言っても過言ではありません。

認知症の方に声かけをする意義を把握したうえで、介護する側もストレスを抱えないように、声かけのコツや言い換えを知っておきましょう。
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認知症の方への声かけのコツ

ここでは、認知症の方への声かけのコツについて3つ紹介します。
認知症の方の性格や経歴などによって、最適な声かけは異なるため、全ての方にワンパターンの声かけをするのではなく、相手によって臨機応変に対応する必要があります。

急がせるような言動をしない

年配の方の中でも、特に認知症の方は食事やトイレなど言動ペースが遅くなってしまいます
介護している側からすると「早く食べ終わってほしい」「いつまでトイレに入っているのだろう」と感じられることもあり、急いでほしいと思いますが、認知症の方に急がせるような言動は避けましょう

認知症の方は、今やっている作業の最中に別のことを考えて、手や足が止まってしまうことも珍しくありません。
「早く食べて!」「いつまでトイレにいるの!」というような急ぐ言葉を使わないことが大切です。

はっきりとゆっくりとした口調で、優しく声かけしましょう

一度に複数のことを伝えない

「ご飯を食べた後にお風呂に入って!」というように、一度に複数のことを言わないようにしましょう。
「ご飯を食べる」「お風呂に入る」は分けた方が、より伝わりやすくなります。

認知症の方は、一度にたくさんのことを話すと混乱する傾向にあります。認知症の方が混乱しないように、相手の反応を見ながら話すことが大切です。

簡潔にわかりやすく話すことを心がけ、できる限り短く区切って話すようにしましょう。

強い口調でプライドを傷つけない

食事をこぼしてしまう・トイレに間に合わない・幻聴や幻覚で騒いでしまうなど、認知症の方は自分の意思に反することで困っています。

認知症の方のペースに巻き込まれると、介護している側はついついイライラしてしまったり、命令口調になってしまったりするかもしれません。

しかし、強い口調や命令口調は、認知症の方のプライドを傷つけてしまいます。認知症の方がイライラしたり、ふさぎ込んでしまったりするリスクも高いので、プライドを傷つけないように心がけることが大切です。

認知症の方は声かけをしてもリアクションがない場合もありますが、聴力に問題はなく、きちんと聞こえていることがほとんどです。反応がないから何を言っても良いわけではありませんので、敬意を持って接しましょう。
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認知症の方に対する言い換えの例

認知症の方への声かけのポイントについて理解した上で、認知症の方に対する言い換えの例を3パターン紹介します。
声かけが強い口調や冷たい口調になりそうなときは、ぜひ参考にしてください。

「ご飯まだ?」のように物忘れに対する指摘の言い換え

認知症の方は、物忘れがひどくなる傾向にあります。代表的な例では、ご飯を食べたことをすぐに忘れてしまうケースなどが挙げられます。

さっきお昼ご飯を食べ終わったばかりのタイミングで「ご飯まだ?」と聞かれた場合、「さっき食べたばかりでしょう!」と正論を伝えるのではなく、「お昼のうどんはいかがでしたか?夕食までは時間があるので、何かご用意しましょうか?」などと伝えましょう。

認知症の方の物忘れに対しては、きっぱりとした訂正ではなく、さらりと受け流すことが大切です。

トイレに間に合わなかったときなどの叱責に対する言い換え

認知症になると、自分の思い通りに頭や身体が動かないこともあります。
たとえばトイレに行きたくても間に合わず、不本意ながら下着や部屋を汚してしまうケースなどがあります。

そういったときに一番ショックを受けているのはご本人です。トイレに間に合わないときに「なんで早くトイレに行かなかったの!」というように、叱責する言葉は避けましょう。

「おなかの調子はいかがですか?看護師さんや先生にご相談しましょうか?」というように、相手の気持ちに寄り添い、解決策も合わせて提案する言葉に言い換えることをおすすめします。

幻覚や幻聴への否定に対する言い換え

認知症の症状の一つに、幻覚や幻聴があります。子どもや虫などの幻聴が見えるということに対して、ついつい「誰もいませんよ!」と否定したくなるかもしれません。

周りの人たちから見れば「おかしなことを言っている」と感じられても、認知症の方にとってはいたって真剣です。真剣に伝えていることを否定されると、周りに対して不信感や攻撃したくなる気持ちが生まれてしまいます

認知症の方の幻覚・幻聴に対しては、「子どもがいるんですね。」というように、その方にはそう見えていることをそのまま復唱し、さらりと受け入れて肯定する言葉に言い換えましょう。
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チャームケアは認知症のご入居者様にも手厚くフォロー

認知症の方への声かけは、コミュニケーションにおいて非常に大切だと解説しました。

声かけは家族間だけでなく、介護施設のスタッフにとっても大切なものです。コツや言い換えを勉強しても、実際に実務で活かせるかどうか不安に感じられるかもしれません。

チャームケアは、認知症の方が安心して心を開けるように、コンシェルジュという傾聴専門スタッフのポジションを用意しており、研修体制も整えています。

介護職は無資格・未経験の人でも働けるように、傾聴の姿勢や声かけの仕方など、認知症の方へのケアに対する研修をきめ細かくサポートします。

まとめ

今回の記事では、認知症の方への声かけについて解説しました。
認知症の方は、反応が薄くともしっかりと周りの声を聞いています。介護をする側の立場も大変なことがあるかと思いますが、怖い・冷たい口調に対して怯えてしまったり、攻撃的になってしまったりする可能性も十分あります。

スローペースになってしまう・物忘れがひどくなってしまうなど認知症の特徴を把握したうえで、優しく肯定的に接することが大切です。

チャームケアは認知症の方へのケアを未経験からでも学べる研修体制が整っています。介護職として認知症の方をケアしたい人はぜひお問い合わせください。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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