介護食とは

介護食とは、噛む力や飲み込む力が弱い高齢者に配慮した食事のことです。

体力や健康の維持には、食事でしっかりと栄養を摂取することが重要です。加齢などが原因で、噛む力や飲み込む力が弱まってしまうと、これまでの普通食では、食が進まないといったケースが出てきます。

また、お食事は老人ホーム等のご入居者様にとって、毎日の楽しみの一つです。ご入居者様それぞれの健康状態に合わせたお食事を提供することで、美味しく安全に召し上がっていただくことができます。

調理法は柔らかく煮る、食べやすいように切り込みを多く入れる、小さく刻む、ペースト状にするなど、さまざまです。

※チャームケアの提携給食業者様との取り組みについての記事はこちら。

介護食の種類

介護食には、どういった種類があるか具体的に確認していきます。

1:軟菜食

軟菜食とは、舌や歯ぐきで潰せるくらい、食材を柔らかくした食事のことです。食材の形は残っているため、通常の食事と見た目の違いはほとんどありません。

肉は筋切りをしたり、野菜は繊維を断ち切るように切ったりと、調理方法に工夫が必要です。軟菜食は、噛む力や飲み込む力が弱くなっている方に適しています。口の中の水分を取られるような食材や、餅のような口内にくっつくようなものは軟菜食には向いていません。

2:きざみ食

きざみ食とは名前のとおり、食材を小さく刻んで調理した食事のことです。

噛む力が低下している方に適しています。一方で、小さく刻んでいるため、口内で食べものをまとめづらく、食べものが誤って気道に入ってしまう誤嚥につながる可能性がある点に注意が必要です。そのため、飲み込みやすいよう、とろみをつける調理法もよく用いられます。

きざみ食は、唾液が少ない方や、飲み込む力が低下している方には向いていません。

また、口内に食べもののかすが残りやすいため、食後の口腔ケアも丁寧に行った方が良いでしょう。大きさは、2cm程度の角切りから、5mm程度の粗みじんまで、さまざまです。

3:ソフト食

ソフト食とは、食材をペースト状にして型に入れて固めた食事のことです。

作るのは手間がかかりますが、きざみ食や後述するミキサー食と比較すると、見た目が普通食に近いため、視覚的に食事を楽しめるメリットがあります。

食材を一度ペースト状にしているため、噛む力はあまり必要ありません。また、型に入れて固める際にゼラチン等を使用することから、つるんとした舌触りで飲み込みやすい特徴があります。噛む力や飲み込む力が弱くなっている方に適しています。

4:ミキサー食

ミキサー食とは食材をミキサーにかけ、なめらかにしたポタージュ状の食事のことです。

食材だけの水分でポタージュ状にならない場合は、出汁などで水分を調整します。噛む力がほとんどない、飲み込む力も弱い方に適しています。

全ての食材をミキサーにかけ、ポタージュ状にするため、見た目で美味しそうに感じられないケースがあります。また、水分が多いことで、十分な栄養を摂取する前にお腹がいっぱいになってしまう方も多く見られます。

水分の多さから、むせたり誤嚥を招いたりする可能性もあるため、粘度には気を付けましょう。

5:ゼリー食

ゼリー食とは、ミキサー食にゼラチンや寒天を加えた、ゼリーのように喉越しの良い食事です。

ゼリー食は、むせてしまう方や飲み込む力が弱くなっている方に適しています。粘度の強いものや食感の固いものは、飲み込みづらくなってしまうため、ゼラチンや寒天の量に注意が必要です。
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介護食の区分方法

介護食には、軟菜食からゼリー食までさまざまな種類がありますが、線引きが曖昧で、介護施設によって呼び名が異なるケースもあります。食材の柔らかさも、軽く噛める程度から舌で潰せる程度など幅が広く、人によって判断が異なるリスクがあります。

介護食の認識のズレを解消するための指標となる2つの区分が、ユニバーサルデザインフードとスマイルケア食です。

1:ユニバーサルデザインフード

ユニバーサルデザインフードとは、食品の固さやとろみに着目し、日本介護食品協議会が制定した4つの区分で特定の表示をしている食品です。食べやすさに配慮しており、介護食としてだけでなく、日常のお食事としても召し上がれます。

ユニバーサルデザインフードでは、ごはん・卵・肉じゃがを例に挙げ、以下の基準で区分し、それぞれに表示を行っています。
区分 ごはん 肉じゃが
容易に噛める 普通炊き〜
やわらかごはん
厚焼き卵 やわらか肉じゃが
歯ぐきでつぶせる やわらかごはん〜
全がゆ
だし巻きたまご 具材小さめ
やわらか肉じゃが
舌でつぶせる 全がゆ スクランブルエッグ 具材小さめさらに
やわらか肉じゃが
かまなくてよい ペーストがゆ やわらかい茶碗蒸し
(具なし)
ペースト肉じゃが

2:スマイルケア食

スマイルケア食とは、農林水産省がこれまでの介護食品を整備し設けた、新たな枠組みです。
「スマイルケア食」は、健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク、噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク、飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マークを表示し、それぞれの方の状態に応じた「新しい介護食品」の選択に寄与するものです。
黄マークは4つ、赤マークは3つに区分されています。前述のユニバーサルデザインフード(以下、UDF)とは、以下のように関連付けられます。
UDF区分 スマイルケア食
容易にかめる 黄色5
歯ぐきでつぶせる 黄色4
舌でつぶせる 黄色3
かまなくてよい 黄色2・赤色2(ペースト状)・赤色1(ムース状)・赤色0(ゼリー状)
農林水産省では、「スマイルケア食の選び方」と題したフローチャートを公開し、食事に関するそれぞれの悩みに対応するスマイルケア食を提案しています。

農林水産省ホームページ

介護食に必要なポイント4つ

介護食で気をつけるべきポイントを4つご紹介します。

1:噛みやすさ

加齢に伴う筋力の低下により、噛む力も弱まる傾向にあります。噛むことに疲れてしまい、食事量が減り、十分な栄養が取れなくなってしまっては、体力も衰える一方です。

負の連鎖を起こさないためにも、食材に細かく切れ目を入れる、小さく切る、噛みやすいようによく煮るなど、介護食には調理方法に工夫が必要です。

2:飲み込みやすさ

噛みやすさと同様に、飲み込みやすさにも配慮が必要です。国立長寿医療研究センターによって、在宅療養をしている高齢者の半数が問題を抱えているという調査結果が発表されています。

飲み込む力が弱まると、誤嚥も起こりやすくなります。食材をしっかり煮る、ゼラチンや片栗粉を使ってとろみをつけるなど、飲み込みやすくする対応を検討しましょう。

3:塩味の調整

高齢者は血圧に注意が必要な方も多くいらっしゃいます。また、加齢に伴い味覚も減退するため、濃い味付けになりがちです。塩分の摂りすぎを避けるため、基本は薄味が良いでしょう。

ただし、味が薄すぎると美味しさを感じづらくなってしまい、食欲減退につながりかねません。出汁で旨みをプラスする、スパイスで変化をつけるなど、美味しさをアップする味付けへの一手間が有効です。バランスの良い塩味を心がけましょう。

4:栄養バランス

加齢とともに、食べる量は少なくなっていきます。たくさん食べられないからこそ、栄養バランスはとても重要です。介護食に積極的に取り入れたい栄養素をいくつかご紹介します。

まず一番目にカルシウムです。カルシウムが不足すると、骨粗しょう症のリスクが高まります。転倒で骨折してしまった場合、部位によっては寝たきりの生活を余儀なくされるかもしれません。カルシウムが豊富な牛乳やチーズなどの乳製品は、体への吸収率も高いため、介護食としてもおすすめです。

二番目に、シニア世代もしっかりと摂取しておきたいタンパク質です。タンパク質不足は、筋肉量の低下を招き、フレイルと呼ばれる身体機能や認知機能が衰えてしまう虚弱状態になりやすくなってしまいます。

肉や魚から動物性タンパク質、納豆や豆腐などから植物性タンパク質と、バランス良く取り入れられるように心がけましょう。アレンジしやすく、他の食材と相性も良い卵にも、タンパク質が豊富に含まれています。かまぼこや缶詰など、手軽に摂取できる加工食品も活用しながら、積極的に介護食に組み込んでいきましょう。

※ホームに合わせたお食事を提供してくださる給食業者様とのインタビュー記事はこちら。
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食事介助の3ステップ

1日のうちで一番食事を楽しみにしている!というご入居者様も少なくありません。介護職員にとっては、人によって誤嚥の可能性もある食事介助は、気の抜けない重要な業務のひとつです。スムーズな食事介助に必要な準備や対応を確認していきます。

ステップ1:食前

食事に集中できる環境づくりが大切です。
気が散ってしまうため、可能であればテレビは消しておきます。また、食事中に席を立たなくて済むように、お手洗いも済ませておきましょう。手を洗い、うがいをして食事をする体勢を整えます。

食事の姿勢も注意が必要です。体をできるだけ起こし、食べ物が食道から胃へと無理なく運ばれるようにすることで、誤嚥や喉に詰まるリスクを減らします。

ステップ2:食事中

食事介助は、ご入居者様の隣に座って行います。噛む力や飲み込む力が弱まっている方は、一口の量にも注意が必要です。ごはんやおかず、汁物やサラダなど、順番に口に運ぶことで、飽きることなく食事を進められます。

食事中の様子を確認しながらお茶なども挟み、食べ物がつまらないように配慮します。時間がかかる場合も焦らず、食事を楽しんでもらうことが大切です。

ステップ3:食後

食事が終わったら、食べた量やかかった時間などから、健康状態を確認しましょう。場合によっては、医師や看護師に相談します。

食後は歯を磨き、口内を清潔にしておきます。食べた直後に横になってしまうと、逆流性食道炎になるリスクがあるため、食後1時間は横にならないように注意が必要です。

高齢者にとって食事は重要

食事は、楽しくハリのある生活をするために必要不可欠です。1日の活動時間が現役世代と比べて短く、活動範囲も狭くなりがちな高齢者にとっては、なおさら楽しみのひとつ。

食事が美味しければ、毎日の活力に直結します。気心の知れた仲間と食卓を囲む時間は、QOLを高めるでしょう。

エネルギーの源となる食事は、栄養摂取という意味で一番重要であることは言うまでもありません。高齢者は食事量の低下とともに、栄養不足になりがちです。偏った食事にならないよう、バランスの良い食事を心がける必要があります。

単に食べやすい調理法を工夫するだけでなく、器を変えてみたり、季節を感じる食材を取り入れてみたり、時にはお取り寄せでいつもと違うメニューにしたりと、食事を楽しむさまざまなアイディアで、毎日の食事に変化をつけるのも楽しいですね。
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チャームケアはご入居者様に合わせた介護食を提供

チャームケアは、ご入居者様・ご家族様からのご要望や、健康状態に合わせて、臨機応変に介護食をご提供しています。チャームケアのお食事は美味しい!と、多数のご入居者様から嬉しいお声を頂戴しているんですよ。

いつも近くで接する介護スタッフだからこそ分かる、ご入居者様の小さな変化を見逃さず、お食事に反映させています。実際に、お食事が進まなかったご入居者様の盛り付け方を変更することで、食事の内容は変えずに食事量をアップさせることに成功した事例がありました。

チャームケアは介護スタッフの提案を、積極的に取り入れる職場環境です。ご入居者様に快適に生活していただくにはどうすれば良いかを考え行動する、やりがいのある職場で一緒に働きませんか。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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