要支援・要介護とは?違いも解説

要支援・要介護の違いとは、日常生活でどの程度の介護を必要とするのかを表す指標です。
二つの違いを簡単に言うと、ひとりで日常生活を送れるか、介助が必要かです。

要支援とは、基本的な日常生活はひとりで送れるが、多少の支援が必要な状態のことです。たとえば食事や入浴はひとりでできるが、掃除などの複雑な動作はひとりでできないなどです。
一方で要介護とは、ひとりで日常生活を送るのが困難で、介護が必要な状態のことです。食事や入浴をするのに介助が必要になります。

また、要支援か要介護かによって、利用できるサービスが以下の表の通り異なります。
サービス 要支援1、2 要介護1〜5
訪問介護
訪問入浴
訪問看護
訪問リハビリテーション
夜間対応型訪問介護 ×
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ×
通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション(デイケア)
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護 ×
短期入所生活介護
短期入所療養介護
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) ×
※原則要介護3から利用可
介護老人保健施設 ×
介護療養型医療施設 ×
介護医療院 ×
認知症対応型共同生活介護
※要支援2から利用可
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ×
地域密着型特定施設入居者生活介護
福祉用具貸与
※介護度によって貸与
できるかが異なる
※介護度によって貸与
できるかが異なる
特定福祉用具販売
住宅改修費の支給

介護の必要度を表す「要介護度」、一覧表で紹介

どの程度の介護が必要なのかを表す要介護度は、心身の状態によって「要支援1、2」「要介護1~5」の7段階で区分されます。
要介護度別に、要介護認定の目安と状態の具体例を表にしました。
要介護度 要介護認定の目安 状態の具体例
要支援1 基本的な日常生活動作はできるが、一部介助が必要。 入浴、排泄などはひとりでできるが、掃除はひとりでできない。
要支援2 要支援1の状態に加えて、歩行が不安定など、ひとりでできることが少ない状態。 歩行時に転倒の危険があり、手すりや杖などが必要。入浴で背中が洗えないなど手助けがいる。
要介護1 要支援2よりも身体能力、思考力低下が見られ、日常生活の一部に介護が必要な状態。 着替えでボタンを外すことが困難。排泄、入浴などに介助が必要。
要介護2 基本的な日常生活動作に介助が必要な状態。認知機能の低下が見られる。 排泄、入浴などに介助が必要。お金や薬の管理など、細かいことができない状態。
要介護3 ほぼ全ての日常生活動作に介助が必要な状態。 着替え、食事、歯磨きなどに介助が必要。不安定な心理状態から、問題行動を起こすこともある。
要介護4 常に介護が必要な状態。 自力で座る、歩くのが困難な状態。入浴、食事など全体的に介助が必要。
要介護5 ほぼ寝たきりの状態。意思疎通をするのが困難。 寝返りやオムツの交換、食事など全ての介助が必要。
要介護度の認定には、厚生労働省によって決められた「要介護認定等基準時間」が使用されます。
簡潔に言うと、介護にかかる手間を「分」の単位で示したものですが、純粋に介護にかかる時間を表すものではありません。

能力、介助方法、障害や現象の有無などの情報をもとにした統計データから推計されます。

以下の表が要介護度ごとの介護認定等基準時間です。
要介護度 要介護認定等基準時間
要支援1 25分以上32分未満
要支援2・要介護1  32分以上50分未満
要介護2  50分以上70分未満
要介護3 70分以上90分未満
要介護4 90分以上110分未満
要介護5 110分以上

要支援2、要介護1の違いとは

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要支援2と要介護1の境界線がわかりにくいとよく言われます。
両方とも要介護認定時間は同じですが、受けられる介護保険サービスが異なります。
それぞれの違いを2つの観点から解説します。

認知症の有無

要支援2と要介護1の境界線は、認知症の有無です。
歩行などは不安定でも、認知機能に問題がない場合は、要支援2。思考力が低下し、認知症の可能性がある場合は要介護1になることが多いです。

状態悪化の可能性がある

認知機能の低下が見られなくても、主治医から状態改善の見込みが低く、体調悪化の可能性があると判断された場合は、要介護1になることがあります。
これらは認定調査員が総合的に判断することなので、あくまで目安と考えておきましょう。

要介護度別、介護保険支給限度額

介護保険支給限度額とは、介護保険からの給付金のことで、介護度に応じて支給を受けられます。支給限度額内での介護サービスは、自己負担1、2割で受けることができますが、限度額を超えると全額自己負担になります。

給付金は直接現金を支給されるわけではなく、利用料から差し引かれます。また地域によって、支給限度額は多少異なるので確認が必要です。
介護度 支給限度額(月額)
要支援1 50,320円
要支援2 105,310円
要介護1 167,650円
要介護2 197,050円
要介護3 270,480円
要介護4 309,380円
要介護5 362,170円

要支援・要介護認定までの流れ

要支援・要介護認定までは、申請・認定調査・結果通知の流れになります。

1.申請

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申請は市役所の窓口で、認定申請書を提出します。

要介護認定の申請に必要な書類

  • 介護保険被保険者証
  • 健康保険被保険者証
  • 身分証明書
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード)
  • 印鑑

必要な書類は、自治体によって異なるため確認が必要です。また本人が申請することが難しい場合は、家族やケアマネージャーが代理で申請することも可能です。

2.認定調査

申請後は、介護を受ける本人や家族に聞き取りを行う認定調査が行われます。

認定調査に必要なもの

  1. 主治医意見書
  2. 訪問調査
  3. 一次判定(コンピューター)
  4. 二次判定(専門家)

まずは市町村の依頼元、かかりつけ医により疾病の有無について、主治医意見書が作成されます。主治医がいない場合は、指定医の診察を受けることが必要です。

訪問調査では、認定調査員が自宅を訪問して、心身の状態に関する調査を行います。身体の動きや意思の伝達、問題行動や社会生活について聞き取りが行われます。

一次判定では介護認定を公正に行うため、訪問調査による結果をコンピューターに打ち込み判定されます。二次判定では、介護認定審査会が訪問調査、一次判定の結果、主治医意見書をもとに結果が確定します。

3.結果通知

申請から1ヶ月ほどすると、結果が郵送で通知されます。認定後は介護サービスを受けるためのケアプランが必要なので、要支援の場合は地域包括センターに、要介護の場合は居宅支援事業所でケアマネジャーに相談します。

介護予防・自立支援の観点が大切

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高齢者の介護予防、自立支援という観点が重要視されれば、要介護状態を未然に防ぎ、健康的で自立した生活を送ることができます。
ここでは、介護予防・自立支援について詳しくお伝えします。

介護予防

介護予防とは、介護が必要な状態にならないように予防、対策することです。要介護の人は回復を目指したり、悪化を防いだりするための対策をします。
訪問型、通所型介護予防サービスなどを利用することもできますが、自分ひとりでもできる適度な運動、バランスの取れた食事、社会と交流を持つなど対策をすることも大切です。

介護予防に必要なもの

  • 適度な運動
  • バランスの取れた食事
  • 社会交流

ウォーキングや筋力トレーニングなど適度な運動をすることで、筋力の衰えを防ぎ自分の足でしっかり歩いたり、転倒による骨折を防いだりすることができます
毎日の習慣にすることで体力がつくのはもちろん、精神面にも作用し、活力が湧くのです。

食事では栄養バランスを考えると、高齢者に多い低栄養対策や高血圧予防にも繋がり、病気を未然に防ぐこともできます。さらに嚙む力は脳への刺激になり、老化防止にも繋がります

また地域のコミュニティやイベントに積極的に参加し、人と交流すると精神的な安定に繋がります。外出する機会を増やしたり、人とコミュニケーションを取る機会を作ると孤独感が和らぐのです。

自立支援

自立支援とは、介護が必要になった方もその手前の方も、自立した生活が営めるよう支援することです。自立とは、身体的自立・精神的自立・社会的自立の3つを指します。

自立支援に必要なもの

  • 身体的自立
  • 精神的自立
  • 社会的自立

身体的自立とは、食事や排泄、入浴などの生活動作が自分で行えることです。
大切なのはひとりでできるように見守ること。ついこちらが手を差し伸べたくなる場合もありますが、自分ひとりで行うことは介護される方のためになります。

精神的自立とは、自分で物事を考え判断し、責任を持って行動することです。こちらが「こうした方が良い」などの考えを伝えるだけではなく、本人が考え、行動してもらう機会を設けることも重要です。

社会的自立とは、社会の規則やルールを守り、周りの人と調和しながら生活することです。
生活していると、人と価値観が合わないなどで意見が対立することがありますが、自分の意見を押し通すだけでなく、人の意見も受け入れながら社会生活を営むことが大切です。時には助言したり、フォローすることが必要になります。

まとめ

今回は要介護認定の目安や状態の具体例、介護保険支給限度額を区分表をもとにお伝えしました。
要介護度は、要支援1・2、要介護1~5の7段階に分けられ、心身の状態によって区分されます。要支援2と要介護1の違いは、認知症の有無や状態悪化の可能性によって判断されることが多いです。

大切なことは、介護が必要な状態になる前に、介護予防や自立支援をして、自分自身で生活を送れるようになることです。
それでも介護が必要となり、介護施設への入居を検討される方には、チャームケアが運営している介護付き有料老人ホームがサポートします。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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