年齢に見合わない重い負担を背負う「ヤングケアラー」とは

――まずはヤングケアラーについて教えていただけますか。

河端:
ヤングケアラーとは、「本来大人が担うと想定されているような家事や家族の世話などを日常的に行っている子供のこと」です。

一般的な「お家のお手伝い」と違う点は、ヤングケアラーの家庭の場合、子供たちが家事や家族の世話をしないと生活が成り立たなくなってしまうという点です。
例えば、障がいや病気をもつ家族の世話や看病をしていたり、親の代わりに家事をしていたり、家計を支えるために働いていたりと年齢に見合わない重い負担を背負うことになってしまっている子供たちがたくさんいます。
2021年にヤングケアラーの実態調査が初めて行われ、中学生の17人に1人がヤングケアラーであるということがわかりました。

ヤングケアラーが直面する問題としては、「学業」や「就職」への影響があると指摘されているんです。
そこで、チャームケアでは、ヤングケアラーの学業と就職のサポート2点に絞って支援活動を始めることにしました。
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ポイント活用がきっかけで始まったヤングケアラー支援

――チャームケアがヤングケアラー支援を始めたきっかけを教えてください。

河端:
弊社で物品を購入する際に貯まったポイントを社会貢献に活かせないかと考えたのがきっかけです。
ポイントを管理していたのが私たち業務管理室なので、私と合田さんを含めた有志4名でスタートしました。
他のメンバーは、ヤングケアラー支援の発案者でもある営業部の日野さんと、人材開発課の越田さんです。

初めはヤングケアラーの支援活動を会社全体でやっていくと決定する前だったので、貯めたポイントで私たちが物品を購入して支援していました。

※ヤングケアラー支援の有志メンバー、日野さんと越田さんの記事はこちら
合田:
支援をするとなった当初、私はヤングケアラーという言葉すら知らない状態で参加し始めました。

興味を持ち始めてからはニュースや新聞をみていても「ヤングケアラー」という言葉をよく目にするようになり、社会的な関心の高さを感じるようになりましたね。
ヤングケアラーについては、現在でもいろいろと勉強中です。

河端:
実際に2021年3月くらいから支援活動の話を始めたものの、一体どこからヤングケアラーの方たちにアプローチしたらいいか手探り状態だったんです。
そんな時、2021年5月に全国で初めて神戸市がヤングケアラーの相談支援窓口を作ったというニュースを新聞で発見し、こちらから連絡をとりました。

その後、神戸市と連携しているNPO法人団体と「具体的にどんな物があれば役に立ちますかね?」という打ち合わせをしたんです。
相談をしにきた子供たちにゆっくりとコーヒーを飲みながら過ごしてもらいたいということで、最初はポイントで購入したコーヒーメーカーをプレゼントしました。
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有志から始めたヤングケアラー支援活動

――最初は有志で始められたのですね。活動を始められて苦労されたことはありますか?

河端:
活動を始めて苦労したことは、ヤングケアラーがどういった支援を求めているのかを知ることでした。
行政自体が具体的な支援を策定する前の時期に支援策を決めるには、たくさんの関係者(行政、NPO法人、大学教授(研究者)など)に話を聞き、介護事業者として何ができるのかを考える必要がありました。
関係者にとっても、企業が支援をすることを想定されていない状況からのスタートでしたので、話を聞くこと自体も大変でした。

活動自体は2021年3月頃から始めて、会社として正式に活動を始められたのは2022年7月からと、約1年半ほどかかった形です。

合田:
会社としても取り組みが認められるようになり、やっとやりたいことも具体的になってきました。
ヤングケアラーへの支援活動は、チャームケアの会社としてのイメージアップになります。
また、支援をしたヤングケアラーの方が弊社の介護スタッフとして就職…ということも考えられるので、人材不足の解消にもつながり会社としてもメリットが大きいんです。
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民間企業として行政やNPO団体ができないことを担うチャームケア

――支援活動を行う上で、神戸市の行政やNPO団体との連携はどのようにしているんですか?

河端:
行政や民間団体ができないことを、私たち民間企業が積極的に取り組んでいきたいと思っています。
私たちだけでは、ヤングケアラーの方を直接見つけることはできません。
神戸市の相談窓口を通して支援が必要な人を紹介してもらい、私たちが支援するという流れになります。
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河端:
私たちが民間企業としてできる具体的な支援としては、大きく3つあります。
1つ目はレスパイト支援。レスパイトとは「小休止」「息抜き」「休息」を意味する言葉で、一時的に家族のケアから解放され、リフレッシュしてもらうための支援です。
ヤングケアラーと、介護を必要とするご家族の方にホームの部屋と食事を無料提供します。

合田:
例えば、ヤングケアラーが受験勉強をしたいという時に、落ち着いて勉強ができる環境を整えるために利用することが想定されます。
あとは、修学旅行に行く時に、介護が必要なご家族の方に一時利用していただくなども可能です。
様々なシーンで活用してもらえますね。

河端:
2つ目が就労支援。ホームでアルバイトをする機会を提供します。
ヤングケアラーの場合、介護や家事をしながらとなると、通常のアルバイトでは時間の融通が効かず、働き続けるのが難しい状況になってしまうんです。
チャームケアでは、そういった事情を配慮して、特別に時間やお休みなどを柔軟に調整します。簡単にいうと、いつ来ても・いつ休んでも・いつ帰ってもいいという環境を用意しています。
元ケアラーの方へ就労訓練として働いて頂くことも想定しています。

3つ目は奨学金の返還支援。弊社に入社した方の奨学金を弊社が代わりに返還する制度です。
ヤングケアラーの家庭では、奨学金を使っている割合が多いんです。家族を養うと同時に奨学金の返還をするのはかなり経済的に負担がかかってしまいます。そのため高いニーズがあると思っています。

合田:
他にも今後は、子供たちを連れて余暇活動やレクリエーションができたらいいと思っています。
ヤングケアラーの家庭は、お出かけや旅行をするのがなかなか難しい環境にあるため、あまり遠出をした経験がない子もたくさんいるんです。
市からの税金は必要最低限の生活保障以外では出ないため、私たちが資金提供をしてNPO法人の方と連携し、そういった楽しい時間作りを実現させていきたいです。
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まずはヤングケアラーの掘り起こしから

――ヤングケアラー支援はどのようにスタートしていくのでしょうか?

河端:
まずはヤングケアラーの掘り起こしが必要です。
1クラスに2人くらいの割合で存在しているヤングケアラーですが、その実態はまだ掴みきれていません。
自分がヤングケアラーだという自覚をもっている子供は全ヤングケアラーのたった2%しかおらず、助けを求められていないという状況なんです。

合田:
ヤングケアラーは家事や家族の世話を小さい頃から当たり前のようにやってきているので、特別なことだと感じていない子供も多くいます。
実際に、家族の世話をしていることを「相談した経験がない」人は7割近くにのぼるというデータがあります。
「相談しても状況が変わると思えない」「話しにくい」「家族のことを知られたくない」といった想いを抱えているようです。

河端:
行政としても現在その部分をメインに行っていて、私たちの支援はその先の話になります。
ただ、必要になってから動き出すのでは遅いので、私たちとしては早め早めに支援できる環境を整えている状況です。

チャームケアでは、ヤングケアラーの当事者が作ったNPO団体「ふうせんの会」と連携をした支援活動も始めています。
これまでにヤングケアラーの当事者の集いの会を、弊社オフィス内の会議室で2回ほど開催してきました。

20代以上の元ヤングケアラーや若者ケアラーの中には、長期的に家族のケアをしてきてメンタル的に辛いと感じている方たちも多くいます。そういった方たちのサポートもしていきたいと思っています。
元ヤングケアラーの方からは、「チャームケアがやっているようなヤングケアラー支援活動が昔からあればよかったな」と言ってもらっています。

現在彼らは、自身の経験を活かしながら、18歳以下のヤングケアラーたちへの支援活動をされています。
例えば、中高生のヤングケアラーが自由に交流できるオンラインサロンなどの環境づくりをしています。
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ホームの介護スタッフの理解や協力体制を得ることが重要

――今後ヤングケアラー支援をしていく中で必要なことは何でしょうか?

合田:
ホームのスタッフの方々の理解や協力が何よりも必要です。
これまでお話をしてきたチャームケアの支援は、実際にホームで行うものです。
ホームの現場にいない本社の私たちが、一方的に「やりましょう」というのではなく、会社として一丸となってヤングケアラーの受け入れ体制を整えていきたいと考えています。

そのためには、まずホームの皆さんにヤングケアラーについて知ってもらうというところから始めているんです。
社員や社員の家族に向けてヤングケアラーの実態や支援の必要性、チャームケアが取り組む意義などを知ってもらう機会を設けたいと考えています。

神戸市から全国へと支援活動を広げていきたい

――今後の目標を教えてください。

河端:
子供が子供らしい生活を送ってもらえるように、介護事業者としてできる支援を行っていきたいです。
そのために最初の目標としては、社内の活動協力依頼をしっかり行い、会社全体で支援活動に取り組んでいきたいですね。

私たちがしっかりとホーム長や介護スタッフに説明をし、ヤングケアラーの支援活動に対して理解をいただければ、「ぜひ参加したい」という人も出てくると思うんです。
そういった私たちの支援に賛同していただける、社内サポーターを募集しようと思っています。

合田:
また、チャームケアで行うヤングケアラー支援は、全国の介護事業所でも同じように取り組めるはずです。
現在連携をしている神戸市の方ともお話していますが、まずは神戸市とチャームケアでしっかりと支援の形を作り、将来的には兵庫県、全国へと支援活動の輪を広げていきたいと思っています。

まずは目の前の課題を一つ一つ解決し、少しでも早く支援させてもらえるヤングケアラーに出会いたいですね!

※子どもたちとの交流イベントの模様はこちら!

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