介護施設の「見守り」とは?

見守りとは、介護スタッフなどの介護者が介護が必要な高齢者等のそばについて、必要な援助を行える態勢をとること。
見守りの特徴は、ご入居者様の身体には直接的に触れずに、言動や様子を観察する点です。

ただご入居者様・ご利用者様を見ているという単純な行動ではなく、ご入居者様の周りの状況や周囲にいる他のご入居者様のことをじっくり観察する必要があり、漫然とはできない難しい介助なのです。
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介護における見守りの3つの目的

見守りはどんな目的で行われるのでしょうか?

今回は、見守りの3つの目的について解説していきます。

1 | ご入居者様の能力を引き出す

介護スタッフが見守るということは、ご入居者様が自らの力で「やる」範囲が増えるということ。

例えば、お食事の場面では介護スタッフ(職員)が、食べ物を口に運ぶ介助をするのではなく、基本はご自身で食べていただきながら、介護スタッフが見守る。
あえて身体的な介助をしないということです。

これにより、ご入居者様は安全な環境下で、自分の力で食事することができ、その方が持っている能力、また尊厳や自尊心を保つことができるでしょう。

2 | 事故を防止する

適切な見守りを行えば、転倒や誤嚥といった介護事故を防ぐことができます。

ご入居者様の中には、ご自身の体調不良に気づいていなかったり、介護スタッフにうまく伝えられない場合もあるでしょう。
そのような時に、ふらつきながら歩行されているご入居者様がいた場合、見守りがあれば介護スタッフが異変に気づきます。
仮に転倒しそうになっても身体を支えることができれば、未然に事故を防ぐことができます。

他にも食事の際には、誤嚥や落薬などさまざまな介護事故の危険があります。

そのようなリスクを念頭におき、事故が起こらないように未然に防いでいく、これが見守りです。

3 | 急変に備える

ご入居者様のほとんどが何らかの基礎疾患(持病)をお持ちです。
そのため、急な体調の変化が起きることも少なくありません。

そのような時に、見守りが適切にできていれば、顔色や言動、動作のスピードなどで異変に気がつき対応することができます。
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見守りの5つのコツ

見守りは、言葉だけで捉えると「見ている」だけのように思い、簡単だと感じる方もいるかもしれません。
しかしそれでは上記の3つの目的を果たすことができず、事故などが未然に防ぐのは難しくなります。

ではどのように「見守り」を行えば良いのでしょうか?
ここからは、介護における見守りのコツを5つ解説します。

1 | 身体機能やADLを正しく把握する

ご入居者様の身体機能や能力はさまざまです。
例えば、椅子やベッドからの立ち上がりにおいても、一人で立ったり座ったりできるか、手すりなど掴まるものが必要か、身体介助が必要かなど、ひとりひとり状況は違います。

また、身体機能は体調などの変化と共に日々変化していきます。
そのため、変化も含めてきちんと把握しておくことで、どのような場面を重点的に見守れば良いのかがわかります。

必ず、事前情報を確認し、正しく把握するようにしましょう。

2 | ご入居者様の動きを予測する

ご入居者様の行動は、ある程度習慣や特性などから予測を立てることができます。

例えば、誰か来客があったら、話しかけようとされるご入居者様がいらっしゃったとします。
人影が見えたらすぐに立ち上がることが予測できるので、転倒の危険性が高い場合は対策が必要です。

他には、右側に麻痺等がありふらつきやすいご入居者様の場合、右側から見守ることで転倒が防ぎやすいでしょう。

このように、ご入居者様の習慣を踏まえ、ご本人の動きを予測することによって、必要な介助をご提供することができます。
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3 | 見守りの目的を理解する

見守りは、ご入居者様の生活をより豊かにしていくために欠かせないものです。
しかしながら、正しく意味を理解していなければ、「ただ見るだけ」になり、正しい支援が行えない場合があります。

そのため簡単な介助と捉えるのではなく、本当はどんな意味があるのだろうと考え、学ぶ必要があります。

ご入居者様の動作や状況が違うため、見守りの目的もご入居者様ごとに異なります。

介護における見守りは、ケアプランや個別支援計画に必ず目的が設定されています。
「誰の」「どの動作に」「何の目的で」見守りが必要なのか、事前に確認・把握するようにしましょう。

4 | 事故や急変が起こった時の正しい対処法を知る

ヒヤリハットや急変が起きた時に、冷静に正しい対処をするためには、事業所等で決められている対処法を事前に知っておくことが必要です。

例えば、その場でまず何をすべきか、誰に協力を仰ぐべきか、事後報告はどのようにすればいいか等。

これらをきちんと知り、身についていれば、事故や急変を恐れず自信を持って介護にあたることができるでしょう。

5 | スタッフ間で情報共有をする

介護はどのような施設・どんな状況でも、スタッフひとりでできるものではありません。
これは、見守りにおいても同じことが言え、自分ひとりの力でできることは少ないでしょう。

例えば、見守りが必要なAさんがトイレに行こうとされている場合、自分一人で周りのご入居者様の見守りを合わせて行おうとすると無理があります。
Aさんに付き添ってトイレに行っている間に、他のご入居者様が急変する事態も起こりえます。

そのような時は、他のスタッフにAさんの見守りをお願いするなど、常にリスクを想定して動きましょう。
逆に、自分がAさんの見守りをする場合、他のスタッフにその場を離れることを伝えたりする必要があります。

このように適切な見守りを行うためには、スタッフ間で声を掛け合い、相談や情報共有を密にし、協力し合うことが必要です。
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見守る上での2つの注意点

見守りは必要不可欠なものですが、見守られる対象の方にとってはさまざまな感情があるものです。
ここでは、見守る上での注意点を解説します。

見守りが「監視」にならないこと

「安全な場所で見守る」のはもちろん大切なことです。
しかしながら、ご本人の立場になって考えると、監視されている・自由がないと感じてしまう方もいるでしょう。
ご自分では、「安全に動作ができている」と判断されている方にとっては、不快に感じる場合も少なくありません。

そのためどのように見守るか、立ち位置・目線など細かな配慮が必要です。
また見守りには、ご入居者様との信頼関係もとても重要になってきます。

「さりげなく」見守り、「黒子のように」そばにいるが気配を感じない、そして必要な時にそっとサポートする…そんな見守りが理想的です。

※ご入居者様との信頼関係についてはこちらをチェック!

24時間全て見守ることは不可能であり不適切

見守りは24時間目を離さないということではありません。

24時間全ての生活動作を見守るということは、福祉機器を活用しても難しく、現実的ではありません。
また、全て見られていることで、プライバシーがないと感じる方もいらっしゃいます。

見守りと、ご本人の考えや尊厳の保持とは、トレードオフの関係にあることを念頭に置きましょう。
どの場面で見守りが必要か、正しくアセスメントし、優先順位をつけて見守りを行う必要があります。
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見守りや介助をサポートする福祉機器

見守りが必要なご入居者様には、常に介護スタッフの目の届くところにいていただくのが一番ですが、ご入居者様の尊厳を守ることや、夜勤帯で常に見守ることが難しいケースでは、「見守り」以外の方法を検討する必要があります。

そのようなときには、福祉機器が活躍します。
ここからは、介護施設等で見守りを補助してくれる福祉機器をご紹介します。

超音波・赤外線センサー

センサーの前をご入居者様が通ったら、それを通知してくれるものです。
壁や家具に取り付けて使われることが多く、ご入居者様の動きを把握するために使われます。

しかし、ご入居者様以外が通った時も通知してしまうというデメリットもあります。

人感センサー

体温に反応し、ご入居者様の動きを検知するセンサーです。
ベッドからの起き上がりや、立ち上がりなど特定の範囲で動きがあったことを検知し、必要に応じて通知することができます。
チャームケアでは、各スタッフが1台ずつ持っているタブレットのアプリに通知が届くように設定されており、自動で記録化されます。
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眠りを測定する機器

ご入居者様の呼吸などを感知する機器を使い、眠りを測定・記録することができます。

眠っている間はプライベートな時間のため、情報が少ない傾向にありました。
そこで、眠りを測定する機器を使うことで、眠りが浅い・深いなどのよりQOLの向上につながる情報がわかるようになりました。

またデータを蓄積することで、客観的なケアができるようになってきています。
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自動体位変換器

チャームケアではエアマットレス型の自動体位変換器を使用しています。

この機器はご入居者様の体重移動や眠りの情報を集め、眠りに合わせて自動で体位変換をしてくれます。

この機器を使うことで、寝返りの身体介助がなくなるだけでなく、転落防止などに役立つため、見守りの役割も果たしてくれます。

インカム

インカムを使うことで、離れた場所にいるスタッフ間の情報共有がスムーズにできます。

これは見守りにおいて、役割を交代する時や役割分担をする時などに役立っています。

チャームケアでは現在、マイクボタンとイヤホンだけの小型のものを使用しており、スタッフの身体的負担も減っています。

※これらのチャームケアで行われている福祉機器の詳細はこちらをチェック!

AIを活用した対話システム

現在チャームケアでは、AIを使った対話システムを開発しているウェルヴィル株式会社と協働で、見守りを行うための対話システムを開発しています。

現在構築しようとしているのは、介護スタッフからの声かけをAIアバターが代わりに行うというもの。

例えば、朝は「おはようございます。今日はお加減どうですか?」など。
その後、会話の内容によっては、「朝食は〇〇です。楽しみですね」とお話が続く場合もあれば、「今日はレクリエーションの日ですよ」とお伝えすることもあるでしょう。
今後の開発に期待が高まっています。

※AIシステムについての詳細はこちらをチェック!

まとめ

今回は、介護における見守りについて、また見守りを補助してくれる福祉機器について紹介してきました。

正しく見守りの意味や目的を知ることで、ご入居者様に安全に、尊厳を持って過ごしていただくための環境づくりができます。

チャームケアでは、このような福祉機器を積極的に取り入れ、介護スタッフの負担を軽減しつつ、ご入居者様に豊かな生活をご提供できるよう取り組んでいます。
介護従事者の方にとって、この記事が参考になることを願っています。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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