今回の記事では、介護現場でのホーム長としての経験を活かして、「傾聴」の大切さやポイントなどを、お伝えしていきます。
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傾聴の意味と、基本的なスキルとは?

まず、今回のテーマである「傾聴(けいちょう)」とは、どのようなものかをお話します。

傾聴とは、カウンセリング技術の1つで、相手を理解することを目指します。
ただお話をお聞きするのではなく、ご入居者様の心に寄り添い、より丁寧に、深くお話をお聞きすることです。

どのような内容だったとしても、まずは受け止める姿勢が必要です。

英語で「Active Listening(積極的傾聴)」と呼ばれ、アメリカの心理学者、カール・ロジャーズにより提唱されました。

2019年現在、傾聴の重要さがより認識され始め、災害などで被災された方の心に寄り添う傾聴ボランティアなども注目されています。

傾聴の方法|気を付けたい5つのポイント

「ご入居者様がご自身の思いを伝えてくださろうとしていたのに、良かれと思って行った行動が裏目に出て、機会を失ってしまった…」とそんなことになってしまったら、とても悲しいものですよね。

そこで、実際に傾聴を行う際に大切なポイントをいくつかご紹介します。

ポイント1|【受容】相手の気持ちを受け入れる

ご入居者様の目線に立って、感じていらっしゃることを全てお伺いします。

このとき、お話されている途中で「でもそれは…」「もし私だったら…」などと、話を遮ってしまうのはタブー。

途中で「それは違うな」と思うこともあるかもしれません。
ついつい、正したくなる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここはぐっとガマンです。

受容とはあくまで「相手の気持ち」を受け入れることであって、「事実かどうか」「正しいかどうか」など内容そのものを受け入れることではありません。


まずはご入居者様のお気持ちを最後までしっかりお聞きしましょう。

お話に詰まる場面があっても、急かしたりせず、言葉を紡がれるのをじっくり待つことも大切です。

ポイント2|【共感】相手の気持ちに寄り添う

お話された気持ちを受け止めて、寄り添います。

ご本人様のお気持ちを否定したり、批判することなく、「それはお辛かったですね」など、同調するようにしましょう。

お話に出てきた喜怒哀楽の感情に合わせて、同調する際にもう1度ご本人様のお言葉を引用するのも効果的

このとき、「ええ、わかります」と安易にお伝えするのはNG。
ご入居者様と、聞いているあなたは全く別の人物です。
感じ方や気持ちがそっくりそのまま同じで、まったく同じ気持ちが分かる、ということはないはず。

なので、共感の姿勢を示すなら、「それはもし、私だったとしても…」「一般的に…」など、言葉の前にクッションを置くことがオススメです。
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ポイント3|【支持】理解していると伝える

お話をお伺いしたあと、ご本人様のお話に登場した事柄などを、返答に交えて反復し、シンプルな質問を投げかけながら、お話に関心を持っているという姿勢を伝えることが大切。

ボディランゲージや笑顔など、言語以外のコミュニケーションも交えてお伝えすると、より伝わりやすいでしょう。

相手に「聞き流さず、お話を理解している」としっかりとお伝えすることで、より深い胸の内を打ち明けてくださる場合もあるんですよ。

過去に、お声掛けの仕方や認知症・難聴の方への伝え方のポイントなどをまとめた記事もありますので、よかったら、下記リンクより見てみてくださいね。

ポイント4|【距離感】つかず離れず、一定の間隔を

前述のとおり、傾聴には共感の姿勢が大切です。
ですが、あまりに距離を縮めすぎるのは禁物。

お話をお伺いするうちに親近感を持ち、「なれなれしさ」にならないように注意しましょう。

また、あなた自身が共感しすぎて、不安になったりつらい気持ちになり、ご入居者様へのサービスに支障がでてしまうのは本末転倒です。

また、ご入居者様があなたを頼ってお話してくださったとしても、専門的な知識なしに、具体的なアドバイスをするのは避けましょう。
思いもよらなかったトラブル・事故に発展してしまうケースもあるからです。

問題を解決するのは、あくまでご入居者様ご本人。
代わりに解決しようとするのではなく、解決の糸口を一緒に探してさしあげるような対応がベストですね。
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ポイント5|【ゆとり】大らかな態度で接する

「余裕のある態度をもって接する」こともポイント。

介護士・看護師であるあなた自身が、せかせかしていたり、時間に追われていたら、どうしても滲み出てしまうもの。

「いったん他のことは置いておこう」と切り替え、気持ちにゆとりをもってお話をお伺いすることで、ポイントに留意しつつ、きめ細かいサービスを提供できるでしょう。

時間的にゆとりのないタイミングであれば、ご入居者様に理由をお伝えして、別の時間をとることをお約束したり、他のスタッフに状況を説明して代わってもらうなど、臨機応変な対応も必要です。

傾聴は、不安感の解消・信頼関係を築くために効果的

介護付老人ホームのご入居者様や、デイサービスなどのご利用者様は、加齢に伴い、活動できる範囲が狭まったことで、「昔ほど社会とつながっているとは思えない」とお考えの方が多くいらっしゃいます。

だからこそ、ご自身のお気持ちを話される機会や誰かに思いを打ち明けることは、不安感の解消や心の安らぎにとても重要。

また、ご自分のお話を、誰かに傾聴してもらうことにより、自己肯定感を高める効果があるとされています。

介護の現場で、傾聴を行う目的は「関係性・信頼関係を築く」「心を開いていただく」…この2つ。
スタッフにとっても、ご入居者様との信頼関係を築けるカギとなるスキルです!

傾聴する力を培っていけば、介護の現場だけではなく、家族間や職場内でも役に立つことでしょう。

もちろん、仕事にも十分に活かせる技です。チャームケアでは傾聴を専門に行う「コンシェルジュ」というポジションもあるんですよ。

こちらも、インタビュー記事がありますので興味のある方は一度チェックしてみてくださいね。

最後に…|チャームケアのサポート体制

いくつか傾聴のポイントやその効果などを解説してきました。

介護の現場には、傾聴だけではなく、他にも気を付けなくてはならないことが多くあります。

チャームケアでは、こういった「傾聴の姿勢」「声掛けの仕方」「ご入居者様と接する際の心構え」など、技術以外の部分でも年次毎、ポジション毎に行われる研修を通じて、きめ細やかにサポートしています

もちろん、無資格・業界未経験の方でも大歓迎ですよ!

この記事を読まれたあなたに、もしご縁があれば、面接や研修などで、お会いできるのを楽しみにしています。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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