介護事務のお仕事内容

介護事務とひとくくりに言っても、介護保険請求の書類作成から、ホームのご入居者様や介護サービスのご利用者様への請求業務、窓口対応や介護職のサポートなど、さまざまな業務があります。

介護事務は会社によって、本部の管理部門や各介護施設の担当部署など、担う部署も異なります。ここでは、一般的な介護事務のお仕事をご説明します。

介護報酬の請求業務

介護事務の主な業務の一つに、介護報酬の請求業務があります。

介護保険が適用される介護サービスは、国からの負担が9〜7割、残りの1〜3割がご利用者様負担となっています。各ホームおよび事業所の集計データをもとに、介護報酬請求をするための「介護給付費明細書(=レセプト)」を作成し、「国民健康保険団体連合会(=国保連)」へ提出します。

請求を行う期間は、介護サービスを提供した翌月の1日〜10日と決まっています。

ご利用者様への請求書の作成

介護報酬の国への請求だけでなく、介護サービスのご利用者様へも請求書および領収書を作成します。

介護保険の負担割合はご利用者様ごとに異なるため、請求書の作成は正確に行う必要があります。介護事業を主とする会社において、利益の大半を占める重要な業務のため、慎重な作業が求められます。
 (10169)

現場のサポート業務

介護施設に在籍する介護事務担当者は、介護職のサポート業務を兼任するケースもあります。
業務内容はケアマネージャーのサポートに加え、備品補充や施設設備のメンテナンス管理など、介護資格を必要としない業務が中心になります。こちらも、介護施設運営になくてはならない業務の一つです。

また、介護施設に見学に来られたご利用者様やご家族様の対応や、医療期間・福祉事務所の担当者など関係者からの電話応対も、重要な業務に挙げられます。これから介護施設の利用を検討している方に良い印象を持っていただけるよう、配慮のある適切な対応が必要です。

経費やスタッフのスケジュール管理業務

介護施設で使用する備品の発注や、レクリエーション・イベントの外注費、施設のメンテナンス費用など、各種経費を管理する、言わば介護施設の会計担当者です。

会社によっては、スタッフのシフト管理を任されるケースもあります。ご利用者様だけでなく、ともに働くスタッフも気持ちよく働ける職場づくりにつながる大切な業務になります。

※チャームケアで請求・支払い業務を担当する業務管理室のみなさんへのインタビュー記事はこちら。

介護事務に役立つ資格やスキルとは

介護施設で事務として働く際、必須となる資格はありません。ここでは保有しておくことで、就職や転職活動で有利になる、介護事務に役立つ資格やスキルをご紹介します。

【資格】介護事務管理士

介護事務管理士は、介護サービスに関連する事務(介護請求事務やケアマネージャーの業務サポート)における高い専門性を証明する民間資格です。

JSMA技能認定振興協会が行う「介護事務管理士技能認定試験」の合格により取得できます。試験は年6回(奇数月)開催しており、在宅での受験となります(2023年6月現在)。年齢や学歴・職歴は不問で、合格率も50〜70%と比較的取得しやすい資格です。

【資格】ケアクラーク

ケアクラークは、介護事務業務において必要となる社会福祉制度や、介護報酬請求業務に関する知識や実務、コミュニケーションスキルなどを証明する民間資格です。

一般財団法人日本医療教育財団が行う「ケアクラーク技能認定試験」の合格により取得できます。試験は年6回(偶数月)開催しており、受験資格はないため、どなたでも受験が可能です。合格率は60〜70%と介護事務管理士同様、合格率の高い資格です。

【資格】介護報酬請求事務技能検定試験

介護報酬請求事務技能検定試験は、専門学校や職業訓練校などで実施されている、日本医療事務協会が行う資格試験です。

その名のとおり、介護報酬請求に必要な事務知識とスキルが審査される試験です。受験には、日本医療事務協会が認定した介護事務講座を修了する必要があります。試験は年6回(偶数月)行われており、合格率は約80%と高くなっています。

【スキル】パソコンスキル

レセプトや請求書の作成にはパソコンを使用します。WordやExcellなどは、問題なく使えるようにしておきましょう。例えば、MOS(Microsoft Office Specialist)の資格などを取得していると、パソコンスキルを証明できます。

【スキル】コミュニケーションスキル

介護事務は、ご利用者様やご家族様、また医療機関の関係者など、社外の方と接する機会も多いお仕事です。ホームや事業所の顔として良い印象につながる、親切な対応ができる人が好まれます。
 (10170)

介護事務の主な就職先

介護事務のスキルを保有する人は介護施設をはじめとする、さまざまな場所で活躍しています。各施設やサービスの役割と合わせて確認しましょう。

介護施設・事業所

・介護付有料老人ホーム
食事や入浴・排泄など日常生活を送る上で介護サービスが受けられるほか、機能訓練やレクリエーションなども充実した介護施設です。なお、入居には「要介護者」の認定が必要となります。

・特別養護老人ホーム
原則「要介護3」以上の在宅での生活が困難な方に、24時間介護サービスを提供する介護施設です。

・介護老人保健施設
理学療法士や作業療法士によるリハビリで、在宅復帰を目指すことを目的とした介護施設です。

・デイサービス
要介護の認定を受けた方に、自立した生活をサポートするため、日帰りでリハビリテーションや介護を行うサービスや施設です。

・ショートステイ
ご家族様が諸事情で数日間介護ができない場合など、最短1日から最長30日まで、一時的に介護施設に入所し介護が受けられるサービスや施設です。

・訪問介護事業所
要介護者様のご自宅にホームヘルパーを派遣し、自立した生活をサポートする介護サービスを提供する事業所です。

その他

・クリニック

・保険請求審査機関
レセプトの内容を審査する側=国保連や、社会保険診療支払基金(都道府県および市区町村などから委託を受け、レセプト内容の審査や保険医療機関へ医療費の支払いを行う)を指します。

・損害保険会社 など

介護事務の魅力・やりがい

ここでは、介護事務の魅力をご紹介します。一般的な事務業務と比べて、専門性が高いことが特筆すべき点です。

デスクワークが中心

介護事務は書類の作成、経費やスケジュール管理など、全身を使う介護職とは異なり、パソコンを使用したデスクワークが中心です。外出の多い仕事でもないため、体力的に不安がある方も安心して業務に取り組めます。

介護の知識やスキルが活かせる・身につく

介護事務は介護保険制度に関する知識をベースとして、レセプトの作成スキルやノウハウなど、介護にまつわる専門的な知識が必要になります。

すでに勉強された方や経験者の方は、その知識を活かして働くことができ、未経験の方は介護業界の幅広い知識を修得できます。

やりがいを実感できる

介護事務はレセプト作成などの事務だけでなく、介護職やケアマネージャーのサポート業務、受付や電話応対など介護施設の顔となる窓口業務、施設の運営業務など、多様な業務を兼任するケースもあります。

介護施設や事業所のあらゆる業務で必要とされる存在のため、やりがいを感じる場面も多いでしょう。
 (10171)

介護事務の難しい点

では介護事務で、難しいと感じる可能性がある点はどんなところでしょう。

マルチタスクを求められる

介護事務は単純な事務作業だけでなく、事務以外の業務を任される場合があります。一度に複数の業務をこなすマルチタスクになることも。
ゆっくりと事務作業だけに集中したい方には、不向きかもしれません。

月に一度、繁忙期がある

介護報酬の請求を行う期間が決まっているため、月末は繁忙になる可能性があります。業務量によっては残業が発生するケースもあるでしょう。月末の残業が困難な方や、ワークライフバランスを重視する方には、難しいかもしれません。

金銭を取り扱うプレッシャーがある

介護事務は、介護報酬の請求業務やご利用者様への請求書の発行など、間接的に金銭のやり取りが発生する業務です。書類にミスがあった場合、金銭の授受が滞る事態につながります。常に正確さが求められる業務に、プレッシャーを感じる方もいるようです。

介護事務に向いているのはこんな人

では、介護事務に向いている人を確認しましょう。当てはまる人は、選択肢のひとつとして、介護事務を検討してみてください。

事務作業やデスクワークが好きな人

介護事務は、事務作業やデスクワークが苦にならない人が向いています。とくに繁忙期は一日中パソコンの前で過ごすこともあるため、落ち着いて事務作業ができる人に適しています。

計算や精査業務など、細かい作業が好きな人

介護報酬の計算や、書類に不備がないかを確認する精査業務など、細かい作業が好きな人は介護事務に向いています。また、定例的な業務の効率化を図るため新たな提案ができる人も、活躍できるでしょう。

管理能力に長けている人

介護事務の仕事は多岐に渡ります。請求業務をしながら、窓口対応をこなすこともあるでしょう。締め切りが決められている業務も多数あります。
期日や進捗をしっかりと把握する必要があるため、スケジュール管理やタスク管理が得意な人は向いていると言えます。

コミュニケーション能力が高い人

介護事務は、介護施設のご入居者様やご家族様、同じ施設に勤めるスタッフはもちろん、医療機関関係者や外部業者など、多種多様な人とのコミュニケーションが必要な職種です。
積極的なコミュニケーションで、深い信頼関係が築ける人は適職でしょう。
 (10172)

介護事務の仕事の疑問を解決!

介護事務に興味があるけれど、収入はどうなの?勤務形態は?などの疑問を解決します。

介護事務の平均給与は?

厚生労働省が発表した令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、平均給与額※は301,940円となっています。平均給与額が295,770円だった令和2年度よりも、約6,000円アップしています。
介護業界はさらなる需要が期待される業界ですので、今後も平均給与額が増える可能性はあります。

※なお、従事者の平均年齢が47.1歳、平均勤続年数が10.7年ですので、長く勤めている方も含めた平均給与である点にご注意ください。

介護事務の勤務形態は?

介護事務は正社員や派遣社員、パートタイムなど、働き方の選択肢が豊富です。
「家族との時間をしっかり取りたいから、今はパートタイムで働きたい」「正社員で、集中して仕事と向き合いたい」など、それぞれが希望する雇用形態を選べます。勤務する会社によっても選択肢が異なりますので、事前にどういった働き方ができるか、確認しておきましょう。

介護事務は未経験でも大丈夫?

介護事務の求人は、未経験で応募できるものが多数あります。
介護事務の仕事で活かせる資格は通信教育や独学で取得でき、未経験の方もチャレンジしやすい特徴もあります。また、各資格の準備期間は、1.5〜4ヶ月と比較的短期間であるため、集中して資格取得に挑戦できるメリットもあります。

介護事務のキャリアステップは?

介護事務として配属された部署にもよりますが、本部の管理部門等であれば部門内での昇進が期待できます。ホームなどの介護施設や事業所に配属された場合は、介護事務のスキルにプラスして、介護職の経験や資格取得により、介護施設を運営・管理するリーダーやマネージャーなどへのキャリアアップの可能性もあります。

※チャームケアで介護事務職から介護スタッフをまとめる統括リーダーにキャリアアップされた三井さんのインタビュー記事はこちら(2023年6月現在、三井さんは介護施設のホーム長を務めていらっしゃいます)
 (10174)

まとめ

介護事務は、介護保険サービスに関連する事務以外にも、幅広い業務に携わる可能性が高い仕事です。介護施設のご利用者様とのコミュニケーションを通してやりがいを感じることも多く、着実に経験を積み重ねることで、キャリアアップも目指せます。
また、介護業界は超高齢化社会の現代において、今後も高い需要が見込まれる業界でもあります。介護施設への就職に、少しでも興味がある人は介護事務という働き方も、ぜひ選択肢に入れてみてください。

関連する記事

関連するキーワード

著者