介護におけるボディメカニクスとは

介護におけるボディメカニクスとは、介護をする側のスタッフ・介護される側のご入居者やご利用者様のどちらも体の負担を最小限にするメソッドです。

介護スタッフは、ベッドからの起き上がり時に体を支える、車椅子に乗る際や入浴介助の際に移乗をサポートするなど、ご入居者様・ご利用者様の日常生活をサポートします。

人間の骨格や関節、筋肉の構造に基づいた力学原理を応用し、無理のない姿勢と小さな力で介護業務が行えるため、介護職員はぜひ身につけておきたい理論です。

ボディメカニクスの知識と正しい姿勢による介助スキルは、よく介護スタッフの悩みの一因に挙げられる腰痛の予防にも役立ちます。また介護スタッフでなくても、一般の方がご自宅で家族の介護を行う場合や育児など、さまざまな場面で応用が可能です。
 (11882)

ボディメカニクスを活用できるシーン

介護の現場において重要なボディメカニクスですが、主に介護する側の視点の方法論であり、ご入居者様・ご利用者様の自立支援の視点が弱い特徴があります。
そのため、下記のような、相手の身体能力を活かすことの優先順位が低いシーンでは、双方にメリットがあります。

ボディメカニクスを活用しやすい相手

  • 術後急性期の入院患者
  • 寝たきりかそれに近い患者または要介護者 障がい者(児) など


良い介助とは、介護士はボディメカニクスを理解して自分の身体を守りながらも、ご入居者様がほんの少しでもできる、動かせる動作を模索することです。
ご入居者様が「自分でできた」「頑張れた」と思えるようにサポートすることが、双方にとって優しい介助と言えます。

現在は、ボディメカニクスを踏まえた上で、新たなケアが取り入れられつつあります。
しかしながら、ボディメカニクスは介護理論の基本となる考えで、しっかりと理解しておくことが重要です。

ボディメカニクスの基本8原則

ボディメカニクスには、基本の8原則があります。ひとつずつ詳しく解説していきます。

・支持基底面を広く保持する
「支持基底面」とは、体重を支えるために必要な床面積のことを指します。足を揃えた状態で立つよりも、足を広げて立った方が体が安定しますよね。介護スタッフは、介助業務などで足を広げ自身の体を安定させた状態で、介助業務にあたっています。

・重心を低くする
支持基底面を広く保ったうえで、膝を曲げ重心を低くすると、さらに体勢が安定します。重心の低い姿勢は、介護スタッフにとって腰痛の予防にも効果的です。

・水平方向の移動を意識する
例えば、ベッドから車椅子へ移乗の際は、ベッドの上を滑るように体重を移動させることで、介護スタッフの負担を最小限に留めます。ご入居者様の体を持ち上げる動作は、腰への負担も増加するため、避けるようにしましょう。

・重心を近く保つ
介助業務でご入居者様の体を支える場合、できるだけご入居者様に体を密着させることで、重心が近くなり力が入りやすくなります。重い荷物を運ぶ際、腕を伸ばして持ち上げるよりも、肘を曲げ体に近づけた方が運びやすくなる理論と同じです。

・てこの原理を活用する
支点・力点・作用点をイメージすると、弱い力でもしっかりとご入居者様を支えることができます。例えば、自分よりも体の大きなご入居者様を介助する場合、ご入居者様の肘やお尻を支点にして遠心力を利用すると、楽に上体を起こすことが可能です。

・ご入居者様の体を小さくまとめる
手足を伸ばした状態よりも、手足を曲げ体を小さくまとめた状態の方が安定感が増し、介助業務が行いやすくなります。

・大きな筋肉を使うイメージを持つ
腕だけで支えようとせず、脚や腰・背中といった大きな筋肉を使うイメージで介助業務を行いましょう。身体の一部だけを酷使すると、痛めてしまう可能性があります。

・押すよりも引く意識を持つ
同じ重さのものを動かす場合、押すよりも引く方が小さな力で動かせます。また、押す動作よりも引く動作の方が腰への負担も軽くなります。力まかせではなく、優しく手前に引く意識を持ってみてください。

※介護職の身体への負担を軽減する働き方についての記事はこちら。
 (11883)

ボディメカニクスの活用例

実際に介助業務を行う際、ボディメカニクスがどのように活用されているのか、具体例で確認しましょう。

動作1:立ち上がる

ご入居者様が椅子から立ち上がる場合、まず介護スタッフは足を広げて立ち支持基底面を広く保ったうえで、膝を曲げ腰を落とし、重心を低くします。次にご入居者様に介護スタッフの背中に手を回してもらい、お互いの体を密着させ、重心を近づけます。ご入居者様には前傾姿勢になってもらい、一緒に立ち上がります。

動作2:身体の向きを変える

仰向けの状態から向きを変える場合、まずご入居者様には肘を曲げ、両腕を胸の前で組み両膝も曲げて、身体を小さくまとめてもらいます。右を向く場合は右半身を支点とし、ご入居者様の左腰と左膝を起こし、続いて左肩を起こします。このケースは、てこの原理を活用すると、介護スタッフの負担を最小限に抑えられます。

動作3:歩行

歩行をサポートする場合、万が一ふらついてしまった際やバランスを崩した際に支えられるよう、ご入居者様の斜め後ろの位置で、歩行を邪魔しない程度に身体を近づけます。

※見守りセンサーの活用で職場環境の改善を実現した記事はこちら。

ボディメカニクスを身につける3つのメリット

ボディメカニクスの修得で、得られるメリットには次の3つが挙げられます。

介護スタッフの負担軽減

ボディメカニクスは介護業務において、最小限の力で最大限の効果が期待できるメソッドです。ボディメカニクスを活用した介助技術は、介護スタッフが頭を悩ます腰痛の軽減も期待できます。身体に負担をかけず、長く介護業務に携わるためにも、積極的にボディメカニクスを活用していきましょう。

ご入居者様・ご利用者様の負担軽減

ボディメカニクスは、人間の骨格や筋力に基づく力学理論のため、力に頼った介助業務とは異なります。介護スタッフだけでなく、ご入居者様・ご利用者様の身体への負担軽減にもつながります。

また、ボディメカニクスを活用したスムーズな介助は、ご入居者様に安心感をもたらす効果があり、ご入居者様との信頼関係構築にも役立ちます。

私生活にも応用が効く

家族の介護はもちろん、育児にもボディメカニクスは応用できます。
例えば、少し大きくなってきた子どもを抱っこする場合も、前項の「動作1」と同じように、足幅を広げて膝を曲げ腰を落とし、子どもに腕を背中に回して前傾姿勢になってもらって持ち上げることで、腰への負担を軽減しながら抱き上げることが可能です。
 (11884)

ボディメカニクス活用時の注意点

ボディメカニクスを介護業務で活用する場合の注意点を確認します。

コミュニケーションを図りながら行う

介助に入る際は、必ずご入居者様に声をかけましょう。次の動作を説明しながら、介助業務を行うことで、ご入居者様も安心して身を預けられます。無理な体勢になっていないか、痛いところはないか確認し、常にコミュニケーションを図りながら介助業務にあたりましょう。

ご入居者様に協力してもらう

ご入居者様に協力を仰ぎ、できることは極力ご自身でしてもらうように心がけましょう。そのためには、ご入居者様の状況をよく観察して、できることできないことをしっかり把握しておくことが大切です。

例え、介護スタッフが行った方が早くご入居者様にとって楽であっても、ご自身で行うことが身体機能の維持向上や、リハビリにつながります。

チャームケアは研修でボディメカニクスが学べる

チャームケアでは、介護未経験の方も安心して学べる研修制度を用意しています。研修は、ボディメカニクスを取り入れた介助スキルが修得できるカリキュラムを始め、実例で学ぶケーススタディやグループワークを通して、現場ですぐに実践できる充実した内容です。

入社以降3年目までは、年次に合わせた研修内容で、成長をサポートしています。参加者からは「定期的に研修や面談があって安心できる」「未経験でも問題なくプロの介護スタッフになれた」といった声が上がっています。

ボディメカニクスを積極的に活用しよう

ボディメカニクスの活用で、介護スタッフにとってもご入居者様・ご利用者様にとっても、身体に負担をかけない介護が実現できます。

チャームケアはボディメカニクスを取り入れた介助スキルを学べる研修に加え、希望休が取りやすく、残業が少ない職場環境が整っています。介護業界に興味がある方は、無理なく介護職を続けられるチャームケアで一緒に働きませんか。

この記事の監修・アドバイザー

 (11881)

大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

関連する記事

関連するキーワード

著者