チャームケアの介護DX

──初めにご経歴と現在の担当業務について教えてください。

2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任した、大野世光です。

私はもともと介護現場での経験が長く、チャームケアでもホーム長をさせていただいたこともあります。
これまでは介護スタッフの研修などに関わっており、チャームPOINTでは一部記事の監修・アドバイザーを担当しています。

今回は、7月から担当することになった、介護DXについてお話させていただきます。

チャームケアは7月で年度が変わるのですが、今年度はじめに組織変更があり2つのDX関連の部署が新設されました。

このうち私が所属しているのは教育研修部の中にある「介護DX推進課」です。

これまでチャームケアでは、介護記録のICT化や介護ロボットの導入・促進などを行ってきましたが、それぞれ専属のスタッフがおらず、他の業務との兼任の状態が続いていました。

現在「DX」はビジネス業界の中でもホットワードで、さまざまな企業で取り組まれています。
「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語で、日本語では「デジタル革新」や「デジタル変換」という意味があります。

DXの概念はとても広いため、ホーム(介護現場)と会社全体に分けて推進するべく、2つの部署が作られました。

私の所属している教育研修室の中にできた介護DX推進課は、介護現場のDX化を進め効率化をしていく部署です。

もう一つのDX関連部署は、社長直下の事業構想室 兼 DX促進室。
こちらは会社全体のDX化についてデザインしています。

先日こちらのチャームPOINTに掲載されたウェルヴィル株式会社との協業は、社内全体のDX、出資先との連携の2つの意味合いを兼ねて、事業構想室 兼 DX促進室で担当しています。

※ウェルヴィル株式会社との協業についてはこちらをチェック!

現場・ホームのための介護DX

──介護DXについてもう少し詳しく教えてください。

現在、チャームケアでは、介護DXとして大きく4つの取り組みを進めています。

どれも関連し合いながら、掛け算式に成果が出ている・期待できる取り組みばかりです。

なかでも、今は見守り機器とインカムの横展開の促進に特に力を入れています。
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1|見守り機器

人感センサーやご入居者様の眠りを測定する機器など、いくつかの見守り機器を組み合わせて使用しています。

各機器が感知した情報は、各スタッフが持っているタブレットのアプリに通知が届くように設定されており、自動で記録化されます。

見守り機器導入前は、ベテランスタッフの経験や知識、勘が重視されていました。
もちろんそれらも大切ですが、導入後は蓄積されたデータから、どのスタッフも客観的なケアを行えるようになり、健康・生活改善につながっています。

特に睡眠についてはこれまで圧倒的に情報が少なく、不明確なことが多かったので、これらの機器を導入してからわかったことがたくさんあります。

例えば、「夜起きずにしっかり眠れている」とか「寝ていると思っていたけど、実は眠れていない」とか。
起床介助に最適なタイミングが掴めたりもすんですよ。

今までわからなかったことが見え始めると、よりよいケアを考えるきっかけになっていて、今各ホームではたくさんの良いケアが生まれています。
この取り組みは、実施ホームを少しずつ増やしている段階です。
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2|自動体位変換器

次はエアマットレスを使ったケアです。

エアマットレスとDXの繋がりがイメージしにくいかもしれませんが、このエアマットレスはすごいんです!
自動でご入居者様の体重移動や眠りの情報を集め、眠りに合わせて自動で体位交換をしてくれます。

このエアマットレスを使うことで、床ずれ(褥瘡)を防止することはもちろん、転落防止やより深い眠りに入れるよう自動で寝心地のいい体位をとることができます。

実際に、夜勤の居室訪問回数が最大半分まで減り、スタッフの負担が軽くなったという声がホームから寄せられています。

ここちあ「利楽flow」紹介動画

3|インカム

インカムはチャームスイート東逗子で最初に導入され、その後各ホームに少しずつ広まっています。

当時の東逗子のホーム長が、前職の経験からインカム導入の提案をしてくださったことがきっかけです。

インカム導入前は、PHSを使用し個人対個人の情報共有を行っていました。
インカムのメリットは、同時にホーム内の全スタッフに情報共有ができることです。

東逗子に導入した時は、よくあるトランシーバー型の黒い端末を腰につけて、イヤホンとマイクをつける形でした。
コロナ禍になってからアルコールボトルに記録のためのタブレット…とケアのために持ち歩くものが多くなったので、今はマイクボタンとイヤホンだけのクラウド型のものに変更しています。

スタッフからの評判も大変良く、横展開しようということになり、現在20ホームほどが導入しています。
次の年度末の6月には全ホーム導入を目標に進めています。

※初めてインカムが導入された東逗子のインタビュー記事はこちら!
※現在インカム導入にチャレンジしている様子はこちら!

4|夜間良眠ケア

夜間良眠ケアは、おむつなどのメーカーであるユニ・チャーム様と協同で進めているプロジェクト
従来1日8回実施していたおむつ交換の回数を、1日4回に減らすことで、ご入居者様に夜はぐっすり眠っていただこうというものです。

ユニ・チャーム様の介護用おむつは、とても優れていて、さまざまな角度から研究されています。
そのため、吸収力が高くおむつ交換の頻度を減らすことが可能なんです。

それまではご入居者様の好みやさまざまな業者さんとのお付き合いもあり、各ホームでバラバラのメーカーの介護用おむつを使用していましたが、今回のプロジェクトをきっかけに、ユニ・チャーム様のおむつに統一。

おむつ交換のタイミング等は、スタッフの経験や知識をもとに行われていましたが、おむつを統一することで、実技も統一されてきています。

さらに同社が開発されたおしり洗浄液を使用し、洗浄・保湿・肌保護を徹底することで、肌状況が向上し、夜間ぐっすりと眠れる方が増えているんですよ。

導入当初は、ケアの手応えを中心にプロジェクトの成果を見ていましたが、さまざまなICT化によりデータではっきりとエビデンスが出てくるようになっており、今後さらに実践の成果が期待されています。

※良眠プロジェクトについての詳細はこちら!

導入にあたり気をつけていること

──介護DXを導入・促進していくにあたり、気をつけていることがあれば教えてください。

現場を知っている人間だからこその視点で、介護DXの推進をすることです。
常にホームの介護スタッフを意識し、介護DXを机上の空論にしてはいけないと感じています。

システムを導入する側は、導入=便利になった、現場は楽になったと思い込みがちです。
ですが、それは本当に現場の介護スタッフたちの役に立っているのか?と考え続けなくてはいけないのです。

例えば、インカムの導入と同様、どんどん持ち物が増えれば、介護スタッフの身体には負担がかかるでしょう。
また介護スタッフが操作する機器が増えていくと、その分だけ手間を取られ、効率化しているはずが、時間を奪ってしまいかねません。

システムを導入するのは私たちの大切な役割ですが、それが実際スタッフの手に渡った時にどういう姿になるかということを想像することが大切です。
スタッフへの配慮ができるかどうかで、導入の進展度合いは変わってくるんです。

目標はスマホ1台持って、ご入居者様のお部屋にいけば、効率がよく、気持ちの良いケアができるという姿。
今はまだまだ想像がつきませんが、一つずつクリアしていきたいです。
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介護DXの未来

──介護DXの可能性について教えてください。

今まで見えていなかったことがデータとして客観的に見ることができ、蓄積されていくのは介護現場にとっての希望だと思っています。

これまでのケアは経験則や主観に頼る部分が多くあり、ベテランスタッフにしかできなかったり、再現性が低く実践に対しての評価の精度が高くありませんでした。

しかし客観的なデータが集積されていくことで、今まで言語化しにくかった部分が可視化されるようになりました。
検討する際に同じものを見て議論・対話できるようになったのは、とても有効なことです。

介護は人の力がないとできない仕事ですが、人をサポートするためにシステムや機器が役に立つので、今後も積極的に取り入れていきたいです。
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厚生労働省の実証事業を受託

──現在の最新の取り組みについて教えてください。

今年度、チャームケアは厚生労働省の「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」の事業者として採択されていて、現在兵庫の3つのホームで実証実験をしています。

見守り機器等を活用した夜間見守りや介護付ロボットの活用介護助手の活用の3つのテーマの中で実施される枠と、手法は事業者からの提案型で実施される枠があり、チャームケアは提案型。
「上記の4つの取り組みに加え、スマートホーム機器を使用し生産性向上をします」と提案しています。

スマートホーム機器とは、家電などのスイッチの自動化のことで、スマホや音声で全ての電源のオンオフなどができるというもの。
今回の実証実験では、チャームスイート宝塚売布・チャームスイート宝塚中山・チャーム加古川駅前で1部屋ずつ実施されています。

元気なご入居者様にはご自分のスマホで操作していただいて、寝たきりのご入居者様にはスタッフが遠隔で操作させていただいています。

従来、お部屋の照明は介護スタッフが操作することがほとんどです。
朝、起床介助に行く際に点灯し、夜、就寝介助にいく際に消灯…というサイクルでつけたり消したりしています。

ですが、自分の立場になって考えたら、マイペースで過ごしたいと思いませんか?
朝は寝ているのに急に人が入ってきて、電気がつけられ、「おはようございます!」と言われて1日が始まり、夜はまだうとうとする前から真っ暗にされてしまうんですよ。

個人的にも、びっくりさせられて1日が始まるのは誰だってイヤだよなあ、自分のペースで寝たり起きたりしたいよなあ、と思っていました。

介護拒否」という言葉がありますが、その背景はご入居者様お一人お一人それぞれです。
一因として、ご入居者様のペースよりも集団生活のスケジュールを優先した結果が考えられます。
自分のタイミングではない時に声をかけられたり、介助が始まったりすることで、反射的に拒否という形で現れてしまうご入居者様がいるのは当然です。

そのため、お目覚めに時間がかかるご入居者様には、起床していただきたい時間の15分ぐらいに前にお部屋に行き、電気をつけたり、テレビの音量を小さくつけておく…ということをしていました。
するとその自然な生活音で、少しずつ目が覚めて、起床介助に伺う頃にはお互いに準備ばっちりで介助させていただけるんです。

この事前に電気やテレビをつけておくという一手間が、スマートホームで自動化できてタイマーで事前に設定できたら、双方の負担が少なくなります。

労働環境を改善することと、顧客満足度を上げることは、表裏一体です。
これからスマートホーム導入をきっかけに、いろんなものを掛け合わせながら、オペレーションをちょっとずつ変えていくことが第一歩です。

「今までこんなことが気になっていたんだけど、スマートホームを使ったらできるかな」という新たな提案が介護スタッフから出てきたら、嬉しいですね!
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まとめ

──最後に今後の目標教えてください。

見守り危機やインカムについては、社内的での効果検証は終わり、効果ありと判断しています。
今後は横展開を進めていくのみなので、頑張っていきたいです!

現在はDXの波がきているおかげで、介護業界もICT化に関するさまざまな補助金が準備されています。
この機会を逃さず、さまざまなことにチャレンジしていきたいですね。

新卒入社のスタッフや就活中の学生さんにもチャームケアの取り組みを積極的にご紹介してまいります。
一緒に介護DXに取り組んでくれる仲間が増えることを願っています!

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