ウェルヴィル株式会社との資本提携

チャームケアは、2021年11月にウェルヴィル株式会社と資本提携を締結しました。

ウェルヴィルは、2018年に創設されたAI対話エンジン「LIFE TALK ENGINE」の開発および提供を行っている会社です。

AIというと、従来のチャットボットのように「天気はどうですか」と聞くと「晴れです」と答えてくれるような一問一答式のものを想像される方が多いと思いますが、「LIFE TALK ENGINE」は違います。

自然言語を理解することはもちろんのこと、音声によって体調や感情まで認識し、人に共感する対話型AIです。

▼ 既存のスマートスピーカーやチャットボットの対話例

人:「明日の東京の天気を教えて。」
AI:「明日の東京の天気は晴れ、気温は23度です。」

▼ 「LIFE TALK ENGINE」の対話例

人:「明日って晴れるのかしら?」
AI:「明日はお孫さんが遊びに来る予定ですね。東京は少し曇りますが、雨は降りませんよ。」


     
このようにウェルヴィルは、「生活に根ざした技術」と「未来を描く技術」を融合させ、世の中のひとりひとりに寄り添ったテクノロジーを開発・提供している会社です。

資本提携の背景と目的

現在の日本では少子高齢化が進み、離れて暮らす高齢家族や独居高齢者の増加と、その健康管理や見守りが社会課題となっています。

チャームケアは「高齢者生活サービスを中心として、お一人おひとりの価値観を大切にした魅力的な生活の提案」という企業理念を掲げ、有料老人ホームの運営を行っています。

一方ウェルヴィルは、「ひとりひとりの豊かな暮らしを支えるAIの実装」を掲げ、様々な研究機関や企業などとの共創を通じて、人に共感しながら寄り添い、信頼関係を構築するAI対話エンジン「LIFE TALK ENGINE」の開発と提供に注力してきました。

日本の少子高齢化社会が抱える課題解決への取り組みの一環として、両社が持つ、介護業界での経験値とAI対話技術の融合を進めることを目的としています。

ウェルヴィルの広報担当 山崎満帆さんと、チャームケアの人材開発課課長 越田直司さんにインタビューを行いました。

いろんな立場の人を幸せにする仕事

──初めに自己紹介と山崎さんのご経歴を教えてください。

山崎:
ウェルヴィル株式会社、広報担当の山崎満帆です。

私は半年前にウェルヴィルに入社し、前職での経験を活かして広報担当をしています。

転職のきっかけはコロナ禍でした。
前職は栃木県にある那須ハイランドパークの広報担当で、とてもやりがいがあり面白い仕事でした。

例えば、バラエティ番組の取材では、今流行りの芸能人の来園があったり!
毎日飽きることなく、楽しくお仕事させてもらっていました。

しかしコロナ禍になると、外出が制限され、娯楽はあっという間に優先順位が下がり、自分自身が社会の中で「できることがなくなった」と感じ、壁にぶち当たってしまいました。

この経験をもとに、できるだけ場所や人にとらわれるのではなく、世の中に必要とされる「いいもの」を発信する企業に絞って探していたところ、ウェルヴィルに出会いました。
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山崎:
AIは今、さまざまなものに活用されていて、いろんな立場の人を幸せにする可能性があります。
そんな部分に惹かれて、転職を決めました。

今日はよろしくお願いします。

越田:
チャームケアの人材開発課、課長の越田直司です。
山崎さん、よろしくお願いします。

ご入居者様向け・スタッフ向けのサービス開発

──では具体的に、現在どのような取り組みをしているのか教えてください。

山崎:
現在、2つのチャレンジを並行して実施しています。

1つ目がご入居者様にお使いいただくサービス、2つ目が介護職向けのDXの開発をして、スタッフの皆さんにお使いいただくサービスです。

ご入居者様向け

──ではまず、ご入居者様向けのサービスについて教えてください。

山崎:
これまで介護スタッフの方がご入居者様にされてきた「声かけ」に代わるものを、AIアバターが行っていくというものです。

普段のお仕事の中で、さまざまな声かけをご入居者様にしていますよね。
例えば、朝でしたら「おはようございます。今日はお加減どうですか?」等。
その後、会話の内容によっては、「朝食は〇〇です。楽しみですね」とお話が続く場合もあれば、「今日はレクリエーションの日ですよ」とお伝えすることもあるでしょう。

これを全て介護スタッフが行うのではなく、一部AIでもやってみようという取り組みです。

現在は、ひとつひとつのセリフを集め、Q&Aやシナリオを作っている段階です。
まずは朝の声かけのシーンに絞って情報を集めています。

私たちウェルヴィルの社員は、日々のご入居者様のスケジュールも知らない状態だったので、チャームケアのスタッフさんに1から教えていただいて取り組んでいます。
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介護スタッフ向け

──次に、介護スタッフ向けのサービスについて教えてください。

山崎:
介護スタッフ向けの取り組みは、2つのことにチャレンジしています。

1つ目は、ご入居様のお部屋等で聞いた会話を記録し、そのまま介護記録となって保存され、必要な時にその情報をAIアバターが教えてくれるというものです。

越田:
とても便利な技術ですよね。初めて聞いた時は驚きました。
申し送りと呼ばれる業務の引き継ぎは、朝と夕方の2回、スタッフの交代の時にやっているのですが、結構時間がかかるものです。

現在は「〇〇号室の〇〇様は、食事の量がこれぐらいだったので、このあとお薬を飲ませてさしあげてくださいね」というような引き継ぎを口頭で行い、次に入るスタッフがメモをとっているという感じです。

それぞれのホームで工夫して取り組んでいますが、ご入居者様の安全を預かっているため、細かい情報がとても多くて大変なんです。

これが口頭で申し送りをするだけで自動的に記録に残り、しかも介助に行く時に必要な情報を教えてくれるなら、確実に効率が上がります。

僕は採用の立場なので、介護スタッフの人手不足に対しては、どのように人材を確保していくのかということと、どのように業務を効率化するのかという両面で課題感があります。
このどっちも叶えてくれそうなので、介護DXはうまくいってほしいなあと思っています。

山崎:
介護のお仕事は、人の介在が欠かせない大切な仕事だからこそ、テクノロジーを活かしていけると良いですよね。

この取り組みは、人材育成の面でも活かせると考えています。
人材育成って、人手不足だとどうしても進んでいかないですよね。
例えば、わからないことがあっても先輩は忙しそうだから聞きづらいとか。

そんな時に活躍してくれるのが、必要な情報をAIアバターが教えてくれるというもの。
これは「〇〇さんの介助に行きます」のようにAIアバターに話しかけると、「〇〇さんはこういう特徴があるので、こうしてください」と、その方の情報や、最新の申し送り事項を教えてくれる機能を想定しています。

こういった機能は、きっと新人さんにとって心強いはずなので、うまく活用してもらえるようになったら嬉しいです。

越田:
特に、新卒入社の方にとってはかなり魅力的ですよね。
ぜひ、実用化に向けて頑張っていただきたいです!

山崎:
2つ目のチャレンジは、業務中の会話などから、介護スタッフ自身の元気や体調を測るというものです。

介護職は、対人のお仕事だからこそ、気持ち的に落ち込むときもあると思うんです。
この機能はぜひ頑張って開発し、介護スタッフのみなさんに使ってもらいたいですね。

越田:
元気を測ることで、どのような効果があるのでしょうか?

山崎:
結果が良くない場合は産業医に連絡を入れたり、その方の上司に報告が入ることでフォローができたり、アバターが「どうしたの?調子悪いの?」って話しかけてくれたりと、さまざまな形で活用できたらいいなと思っています。

越田:
とても良い機能ですし、介護の現場に必要なものですね。
元気に働けるからこそ、未来のキャリアも考えられるので、メンタルケアもしてくれるのはとても心強いです。
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介護職は大切であると同時に、大変な仕事でもある

──介護業界への思いを教えてください。

山崎:
介護ってすごく尊い仕事ですが、同時に大変なこともたくさんあると思うんです。
なので私自身、いつも尊敬しています。
しかも、新卒入社など若いうちに介護業界にチャレンジするのって本当にすごいことですよね。

お仕事に尽力している介護スタッフのみなさんを少しでもサポートしたいという思いがあります。

自分のやりたい仕事であっても、いろんな理由で体調を崩してしまったりうまくいかないことってありますよね。
せっかく夢があって、好きなことを仕事にできる環境があるのなら、心身共に良い状態で働けるようにサポートしたいです。

越田:
介護業界にはもちろん魅力もありますが、大変さも実感しています。
私も、新卒から長く働けるような会社・業界にしていきたいです。

チャームケアのスタッフたちが、志半ばで離職することのないよう私たちも支えていきたいですね。
次の夢があって転職したい、というスタッフは気持ちよく送り出せますから!
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試行錯誤しながら発展中

──実証実験をやる中で苦労したことがあれば、教えてください。

山崎:
今回のメインターゲットは高齢者の方で、ITに馴染みのない世代です。
「AIに話しかけてみてください」と言われても、どうしたらいいか分からないですよね。

AIやチャットボットの会話に慣れている方であれば、「今日の天気は?」などの質問がすぐ思い浮かぶし、聞きたいことが聞けたら「そうなんだ、ありがとう」などと言って会話を終わらせることができますよね。

経験がない高齢者の方だと、そもそも機械に話しかけることが難しい方もいらっしゃると思います。
開発チームもそういったことが想定外で驚いたようでした。
※ウェルヴィルが取り組まれている、他のチャレンジはこちら!

アバターにチャーミンを起用!?

──高齢者の方も使いやすくするために、今後取り組もうとしていることを教えてください。

山崎:
今後は、見せ方の部分も工夫していきたいです。
普段使い慣れていないタブレットやPCに、急に堅苦しい女性が出てきて話しかけられてもびっくりしてしまいます。
でも、知っているキャラクターが出てきて「ねえねえ、お話ししよう」などと言われたら、自然と答えられるかもしれません。

そんなふうに高齢者の方に馴染みやすい見せ方を考えていきたいですね。

越田:
なるほど!それは、キャラクターとかでもできるんですか?

山崎:
キャラクターを映し出すこともできますし、写真データを動かして使うこともできますよ。

越田:
すごいですね。
例えば、チャームケア公式マスコットキャラクターのチャーミンはどうでしょう?
夏祭りなどにチャーミンが来ると、皆さん喜ばれるんです。
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山崎:
それはいいアイディアかもしれません。
チャーミンはどんなキャラクターなんですか?

越田:
チャーミンは社長の一言がきっかけで生まれた、傾聴が得意な妖精です。
大阪モード学園さまと協業で、学生さんの夏休みの課題として考えていただき、スタッフの投票で決まったんです。

ゆるキャラグランプリにも出場経験があるんですよ!

山崎:
傾聴が得意ということでコンセプトにもぴったりですし、かわいいですね。
ご入居者さまもチャーミンが話しかけてくれたら、喜んでくださるかもしれないですね!

※チャーミン誕生秘話もあわせてチェック!

世の中のひとりひとりに寄り添ったテクノロジーを

──最後に、今後の目標を教えてください。

山崎:
ウェルヴィルでは、世の中のひとりひとりに寄り添ったテクノロジーを目指し、日々AIの開発に取り組んでいます。
一口に高齢者と言っても、チャームケアの運営しているような老人ホームで暮らしている方から、お一人暮らしの方など、背景はさまざまです。

今回の協業では、まず施設で暮らしている方に使っていただけるサービスを構築することから始め、だんだん在宅に近づけていき、お一人暮らしの方向けのサービスも開発していきたいです。

そうすることにより、弊社の目指している、多くの方が「この世界で生きてみたい」と思える暮らしの実現に近づくと考えています。

また今回の実証実験で、私たちは高齢者の方が抱える状況が、それぞれ全く違うことを初めて知りました。

例えば、認知症の傾向がある方とない方、またその症状の程度でも会話は異なります。

どんな方に使っていただいても不自由ないようにしっかりとカバーし、高齢者の皆さんにとって使いやすく、本当の意味で高齢者の方に寄り添うサービスを提供することを目指しています。

これからも、チャームケアの皆さんに色々教えていただきながら、よりよいサービスを提供できるように努めていきます。
今後もよろしくお願いします。

越田:
こちらこそ、よろしくお願いします!

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