専門実践教育訓練給付制度とは

専門実践教育訓練給付制度とは、教育訓練給付制度のひとつで労働者のスキルアップ支援や雇用の安定・就職の促進を目的とし、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講または修了した方に対して、かかった費用の一部が支給される制度です。

専門実践教育訓練は、中長期的なキャリア形成に基づく講座が対象となっています。代表的なものに、介護福祉士や看護師・准看護師、歯科衛生士や保育士などの資格を取得する講座や、特定のデジタル関連講座、法科大学院やMBAなどの学位課程が挙げられます。
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専門実践教育訓練給付制度の支給対象者と条件

専門実践教育訓練給付制度は、雇用保険の被保険者を対象としています。
厚生労働大臣が定める専門実践教育訓練講座を修了する見込みであることに加え、下記のいずれかに該当する必要があります。

①在職者の場合、教育訓練の受講開始までに2年以上雇用保険に加入している
②離職者の場合、雇用保険の加入期間が2年以上あり、離職の翌日から受講開始日までが1年以内である


今までに給付金を受給したことがある場合でも、前回の受講開始日から雇用保険の加入期間が3年以上ある、もしくは前回の給付金支給日から今回の受講開始日までに3年以上経過していれば、給付金の再受給が可能です。

また、妊娠・出産等の理由により、教育訓練の受講ができない場合、ハローワークに申請することで、適用対象期間が最大20年まで延長されます。

専門実践教育訓練給付金の支給額

給付金は教育訓練にかかった費用の50%が6ヶ月ごとに支給されます。年間の給付上限金額は40万円です。
資格取得等によって教育訓練修了後、1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された方は、さらに費用の20%(給付上限金額は年間16万円)が追加支給されます。

教育訓練後に賃金が5%以上増えた方は、別途教育訓練経費の10%(上限金額は年間8万円)が追加支給されます。
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支給対象となる講座

専門実践教育訓練給付金の支給対象となる講座を確認していきます。
給付の支給対象となるためには、厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講する必要があります。講座は4月と10月の年2回指定されており、その有効期間は3年です。

令和7年4月1日時点で、専門実践教育訓練の指定講座数は3220講座です。
指定教育訓練は大きく6つに分類されており、教育訓練の期間やそれまでの講座実績など、一定の要件を満たす必要があります。
 類型 具体例 教育訓練の期間 実績
①業務独占資格または名称独占資格に係るいわゆる養成施設の課程 看護師・准看護師、介護福祉士、美容師、社会福祉士 等 原則、1年以上3年以内であり、かつ当該資格の取得に必要な最短期間 入講者の受験率80%以上
合格率が全国平均以上就職・在職率80%以上
②専門学校の職業実践専門課程及びキャリア形成促進プログラム 商業実務、衛生関係、工業関係等 ○職業実践専門過程:2年
○キャリア形成促進プログラム・専門課程:1年以上2年未満・特別の課程(履修証明プログラム):120時間以上かつ2年未満
就職・在職率80%以上
③専門職大学院 教職大学院、法科大学院、MBA 等 2年以内(資格取得につながるものは、3年以内であり、かつ取得に必要な最低期間) 就職・在職率80%以上
直近の認証評価(機関別評価及び分野別評価)で適合相当最新年度の入学定員に占める入学者の割合60%以上
④大学等の職業実践力育成プログラム(BP) 自動車工学、会計マネジメント 等 ○正規の課程:1年以上2年以内
○特別の課程(履修証明プログラム):120時間以上かつ2年以内
就職・在職率80%以上
大学院における正規課程の場合は、上記に加え、最新年度の入学定員に占める入学者の割合60%以上
⑤第四次産業革命スキル習得講座等の課程 第四次産業革命スキル習得講座ITSSレベル3以上の情報通信技術関係資格の取得を目標とする課程  30時間以上かつ2年以内 就職・在職率※180%以上 ほか
⑥専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の課程 ○専門職大学の正規の課程及び大学の専門職学科の課程:4年以内
○専門職短期大学の正規の課程及び短期大学の専門職学科の課程:3年以内
就職・在職率80%以上
直近の認証評価(機関別評価及び分野別評価)で適合相当最新年度の入学定員に占める定員充足率60%以上
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専門実践教育訓練講座の受講から給付金申請までのフロー

実際の専門実践教育訓練講座の受講から、給付金申請までのフローを順を追って確認していきます。

1:受給資格確認とジョブ・カードの作成

まず受給資格があるかどうかを確認します。受給資格の確認は、居住地管轄のハローワークで行います。

「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、ジョブ・カードを作成します。ジョブ・カードは「生涯を通じたキャリア・プランニング」および「職業能力証明」のツールとして活用します。

受給資格確認には、ハローワークなどで配布する『教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票』、ジョブ・カード、マイナンバーカードまたは運転免許証などの本人確認書類、給付金の払込を希望する金融機関の通帳等のハローワークへの提出が必要です。

上記の手続きは、専門実践教育訓練講座の受講開始日2週間前までに行う必要があります。

2:専門実践教育訓練講座の申込・受講

前項で確認した専門実践教育訓練給付金の対象講座を申し込み、受講します。
この時点では、申込金やその他受講にかかる費用等は自己負担となることに注意が必要です。申込時に「専門実践教育訓練給付金の制度を利用する」予定があることを伝えておくと、給付金の申請手続きの際に必要な書類の発行がスムーズになるでしょう。

3:専門実践教育訓練給付金の申請

専門実践教育訓練の受講中は、受講開始日から6ヶ月後の期間の末日の翌日から起算して1ヶ月以内に、居住地管轄のハローワークにて支給申請をする必要があります。

例えば、4月1日に受講をスタートした場合の支給申請期間は10月1日~31日です。ハローワークへの通所での申請以外に、電子申請や郵送申請も可能です。
専門実践教育訓練修了後は、修了日の翌日から1ヶ月が支給申請期間となる点を覚えておきましょう。

申請時に必要な主な書類は、下記のとおりです。

・教育訓練給付金支給申請書
・教育訓練給付金受給資格者証(または教育訓練受給資格通知)
 ※受給資格確認の手続き後、ハローワークより交付されます。
・受講証明書(または教育訓練修了証明書)
 ※教育訓練実施者により発行されます。
・教育訓練にかかる費用の領収書
・マイナンバーカード ほか

前述の「専門実践教育訓練給付金の支給額」でも記載したように、一定の条件を満たせば給付金の追加給付を受けることも可能です。

※出展:専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」のご案内
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給付金はいつもらえる?

給付金申請が承認されると、指定した金融機関の普通預金口座へ7日以内に、給付金が振り込まれます。
給付金の支給遅延は、申請者の生活に影響を及ぼしたり、学習意欲の低下につながる恐れがあることから、実際の支給は迅速に行われています。

専門教育訓練給付金制度をもっと知りたい

専門教育訓練給付制度は、教育訓練制度のひとつです。教育訓練のレベルや目的に応じて3種類に分類され、今回詳しく説明した専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練があり、給付率も異なります。

キャリアアップやキャリアチェンジを考えている方やご自身の可能性を広げてみたい方は、この機会に教育訓練給付制度を深く理解すると共に、制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

厚生労働省のホームページや、ハローワークのホームページで詳細が確認できます。

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