この記事では、介護サービスを行う上で重要なご入居者様に対する「上手なお声かけ」について解説します。

24時間、365日ご入居者様と接する、入居型の介護施設においては、特にご入居者様とのコミュニケーションは欠かせません。
「お声掛け」のタイミングや声の大きさなどのコツを身につければ、介護の仕事に活かすことができますよ。
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介助における声かけの大切さ

介護の現場において、「声かけ」はとても重要なもの。

ご入居者様を介助する際に、何も言わずにお体に触れてしまうと、ご本人は「何をされるんだろう…」と不安な気持ちになります。

事前に「これから、食事にいきましょう」などとお声かけすることによって、ご⼊居者様の不安な気持ちを和らげることができます。

ホームでは、移乗・食事・入浴・排泄介助などを毎日行っています。

これらの介助をする際、丁寧にお声かけすれば、ご入居者様も、何をされるのかと身構える必要なく安心して介護を受けることができます。

また、加齢に伴い、心身機能の低下がみられ「心と体のバランス」が崩れることで様々なストレスを感じることがあります。

そのため、相手の自尊心を傷つけるような言葉や、命令や否定などの不快感を与える言葉は使わず、気を付けて声かけをすることが重要です。

認知症の方への声かけの4つのポイント

認知症になると、数分前のことが思い出せなかったり、物の名前が出てこない…などの症状が出てきます。

症状が進行すると、不安感や理解力の低下から、⼈を疑ったり介護を拒否したり、さらには⼀切会話をしなくなったりします。

認知症とは、脳の委縮などが原因で、下記のような症状を起こし、日常生活に支障を期待してる状態をいいます。
・記憶障害
・見当識障害(いつ?ここはどこ?あなたはだれ?)
・実行機能障害
 (テレビのリモコン操作ができなくなる・食事の準備ができなくなるなど)
・失行(衣服を正しく着られなくなる)

このような状態で毎日を過ごされるご入居者様は、常に不安な気持ちでいっぱいです。

そのため、安心していただけるような声かけが必要となります。
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認知症の⽅への声かけのポイント1|ゆっくり、わかりやすい⾔葉で話す

ゆっくり、はきはきと、わかりやすい⾔葉でお話することは、介護の現場では基本のこと。
改めて、特に注意してみましょう。

もし、「あなたは誰︖ここはどこ︖」と質問された場合にも、ここはどこで、⾃分が話しかけている目的なども添えて丁寧にお伝えしてさしあげてくださいね。

認知症の方への声かけのポイント2|安心していただけるように、笑顔で話しかける

笑顔でお話することで、ご入居者様に安心していただけるように心がけましょう。

いくら声かけに気をつけていても、無表情だと誠意が伝わらないもの。
⾔葉の内容と表情が⼀致しないと、正しく感情が伝わらないことがあります。
自然な笑顔・表情を心掛けたいですね。

認知症の方への声かけのポイント3|伝えたい内容はシンプルにひとつずつ

認知症になると、同時にいくつもの内容を理解しづらくなります。
そのため、⼀度にいくつものことを話さないようにしましょう。

仮に、いくつかのことをご入居者様に伝えたい場合も、内容を区切ってひとつずつ伝えるようにしましょう。

認知症の方への声かけのポイント4|否定せず、共感の態度を示すこと

ご入居者様ご本人が抱いている、不安な気持ちへの理解も大切です。
「否定しない」ことと「共感の態度を示す」ことが重要。

たとえば、「誰かに監視されている!」と言われた場合は、否定するのではなく、「誰か怪しい⼈がいたのですね。周りを確認致しますね。」と、まずはご本人に同調しましょう。
すると、安心していただけるようになり、信頼につながります。

難聴の対策|声かけは落ち着いた⼝調で

「しっかり声かけをしているつもりだけど、お返事がもらえない…」という悩みを抱えている介護初⼼者の⽅は少なくありません。

ですが、それは無視されているのではなく、⾳が聞き取りづらくなるため。

老人性難聴(感音性難聴)では、特に⾼⾳域が聞き取りづらくなる傾向があります。
いっぽうで「あ・い・う・え・お」の母音の聞き取りは比較的保たれやすいのが特徴です。
少し低めの声で、はっきりした話し⽅を心がけましょう。

また、認知機能の問題で、早⼝でお話しすると、内容を理解しづらくなります。

そのため、声かけの際は、できるだけわかりやすく、ゆっくりと話すことを⼼がけましょう。
ゆっくりとお話することで、会話の内容を理解しやすくなります。

さらに、ご⼊居者様が横になっていらっしゃったり、⾞いすに座っていらっしゃる場合、同じ⽬線に合わせて、しゃがんでお話しするのもオススメですよ。
威圧感を覚えず、スムーズに受け⼊れていただきやすくなります。
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上手な声かけの3つの具体例

介護サービスをご提供する上で、上手なお声かけが重要です。

ケースに合わせて、いくつか具体例をご紹介します。

【ケース1】朝の起床時介助の際

「おはようございます」とだけ⾔うのではなく、「おはようございます、○○さん」と、お名前をつけてご挨拶すると、より親しみを感じていただけます。

「体調はいかがですか︖」や「今⽇はいい天気ですね」「今日の朝食は、△△です。〇〇さん、お好きでしたよね?」など、⼀声添えるのもいいですね。

【ケース2】オムツ交換などの排泄介助の際

排泄介助する時も、「オムツ」や「パット」とは表現せずに「下着を交換させていただきますね」と声かけをしましょう。

排泄介助の時の声かけは、ご⼊居者様の⾃尊⼼・羞恥心への配慮が非常に大切です。
配慮を怠ることでご入居者様が排泄を我慢され、便秘になってしまうこともあります。
注意して声かけをする必要があります。

【ケース3】入浴介助の際

介護経験者の⽅からも、「慎重にしないといけないので⼤変」と声があがっているのが⼊浴介助。

⼊浴介助を断わられるご⼊居者様も多いのが現状です。

その場合は、"お⾵呂"や"⼊浴"といった⾔葉は使わずに、「少し体を温めませんか︖」「汗をかいたのでちょっとさっぱりしませんか︖」とニュアンスを変えて、声をかけてみるといいですよ。

実際に、チャームのご入居者様の入浴介助でも「これから、お風呂に行きましょう」と伝えるとお断りされる方でも「あちらでリラックスしながら、一緒にお話ししませんか?」などお声掛けし、脱衣室で改めて「湯船に浸かって、ゆっくりしましょう」とお伝えすると入浴いただけたということもあります。 

スタッフによっても入浴のお誘いが上手なスタッフがいます。
そんな時は、上手なスタッフをマネてみるのも一つの方法ですね。

介護のお声かけは、相手の表情を観察することが大切

ここまで、ご入居者様にお声かけするときの注意点についてお話ししました。

一番大切なのは、お話しているときに、ご入居者様の表情を観察すること。

「聞き取りづらかったかな…」「伝わっていないかも」と感じたら、
一人ひとり、その方に合わせて声量やスピードを変えるなど、
話し方を工夫してみましょう!

ご入居者様にご満足いただきたいという、あなたの気持ちが伝われば、
きっと信頼関係が築けるはずですよ。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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