介護職における退職の実情

公益財団法人 介護労働安定センターが行った「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職の離職率は13.1%で、すべての産業における平均離職率15.4%よりも低い水準でした。

介護職は離職率が高いという印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、近年では、介護職員等処遇改善加算を代表とする国による介護職員の処遇改善への取り組みや、有給休暇取得率の増加など、介護業界全体の働き方改革が進んでいるようです。
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介護職の主な退職理由

前述の「令和5年度 介護労働実態調査」をもとに、離職経験がある介護職員のうち、前職も介護関係の仕事をしていた職員を対象として、退職理由をヒアリングした結果が得られています。この結果から、主な退職理由を確認していきましょう。

1:職場の人間関係に問題があったため(34.3%)

男性では2番目に、女性では1番多い退職理由として、職場の人間関係が原因に挙げられました。

介護職はご入居者様・ご利用者様をはじめとして、ご家族様、一緒に働く介護スタッフや看護師など、さまざまな人と接する機会が多い職種です。
また、介護職は比較的女性が多く、女性同士でコミュニケーションをとる機会も多いため、特有の人間関係に悩むケースがあります。

介助業務には、スタッフ同士の円滑なコミュニケーションが欠かせません。意思疎通がうまく図れない上司や先輩がいる職場環境では、過度なストレスを感じてしまい、退職を検討するスタッフもいるようです。

2:法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため(26.3%)

効率や利益を重視する施設・会社側と、ご入居者様に寄り添ったサービスを提供したい介護職との考え方の相違から、退職に発展する事例もよくある話です。
理想と現実のギャップは介護職に限ったことではありませんが、日々の業務に支障をきたす場合は、退職につながる可能性があります。

3:他に良い仕事・職場があったため(19.9%)

介護職は、職場によって給与面や福利厚生などの待遇に幅がある職種です。
また、介護関連の職場は、老人ホームなどの入所型の施設からデイサービスなどの通所型の施設、訪問介護など、種類も豊富にあるため、転職を考えた場合の選択肢も広がります。

待遇や通勤のしやすさなど、希望に合致する施設や事業所があれば、転職する介護スタッフもいるでしょう。

4:収入が少なかったため(16.6%)

介護職は、介助業務での実質的な体への負担だけでなく、命を預かる職業でもあることから精神的な負担も抱える職種です。仕事の内容の割に収入が少ないと感じる介護職員も少なくありません。

介護職は、保有している資格によって資格手当が支給される施設や事業所もあるため、転職する場合は、待遇や福利厚生について事前にしっかりとリサーチする必要があります。

5:自分の将来の見込みが立たなかったため(13.2%)

介護職として長く勤めたいと考えた場合、今の職場で将来的にどういったキャリアを積むことができるかが、転職を考える重要なポイントになります。

「ホーム長になりたい」「リーダーになりたい」とキャリアアップを考えているにも関わらず、個人経営の施設でポジションが固定されており、昇格を期待できない職場では、理想のキャリアを積むことができません。
将来のビジョンが見えない職場環境は退職を検討する理由として十分です。

※仕事を辞めたいときの対処方法について解説した記事はこちら
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介護職員が円満に退職する4つのポイント

介護職員が職場に退職を伝えるにあたって、いくつか注意するべき点があります。退職の意向を伝えてから、実際に退職するまでの間、肩身が狭い思いをしないためにも、しっかり確認しておきましょう。

直属の上司に退職の意思を伝える

退職の意向は、まず直属の上司に直接伝える必要があります。言い出しづらい内容ですが、メールや電話ではなく、直接口頭で伝えましょう。直属の上司よりも先にホーム長や仲の良い同僚に話すのもマナー違反ですので、注意してください。
退職の意思を直接伝えることで、真剣さや誠実さが伝わるでしょう。

退職日までに余裕を持つ

退職は少なくとも退職予定日の1ヶ月前までには、報告するようにしましょう。2~3ヶ月前であれば、職場も余裕を持って人員補充の時間を確保できます。また、業務の引き継ぎもあるため、退職日が決まったらできるだけ早めに報告することが望ましいでしょう。

退職日までに人員に余裕があれば、有給休暇を消化することも可能です。直前の退職は、職場の混乱を招き、ご入居者様へも迷惑をかける結果となるため、避けなければなりません。

多くの介護関連施設や事業所は、人手が潤沢ではありません。大きなイベントの前や他にも退職者がいる場合は、退職の時期をずらす配慮が必要な可能性があります。

次の就職先を決めてから報告する

退職日を決めて報告するのと同じように、次の就職先を決めてから退職を報告することも、余計な軋轢を生まずに退職できる方法のひとつです。
「○月から次の職場なので、△月末で退職させてください」など、明確に日付が決まっていれば、引き止めに合う心配も少なくなります。

待遇面を退職の理由にしない

「夜勤が多くて体がつらい」「正社員になりたい」など待遇に関する理由は、改善を提案され引き止められる可能性が高まります。仮に待遇面に改善が見られても、続ける意思がない場合は待遇面を退職の理由にしない方が賢明です。

退職の理由が、職場ではどうすることもできない家庭の事情や引っ越しの場合は、理解も得やすく円満な退社につながりやすい傾向があります。

※転職に迷ったときの判断ポイントについて記載した記事はこちら
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引き止めにあったときの対応

引き止めにあっても続ける意思がない場合や、次の職場が決まっている場合は毅然とした態度で、はっきりと退職の意思を伝える必要があります。

職場としては大切な戦力を失うため、待遇改善などの提案で退職を思いとどまってもらえるよう説得を受けることも考えられます。仲の良い同僚や、信頼関係を築いたご入居者様がいる場合は、なおさら後ろ髪を引かれるかもしれません。

引き止めてくれたことへ感謝の気持ちを表しつつ、一時の感情に流されず、将来のキャリアを考えて出した結論であることを伝えましょう。
キャリアアップのための前向きな退職の場合は、次の職場でチャレンジしたいことなどを率直に話すことで、背中を押してもらえる可能性もあります。

転職時に退職理由を上手に伝えるポイント

介護職に限らず、転職の場合は前職の退職理由は面接で聞かれることが多いでしょう。面接官に好印象を与える伝え方を確認していきましょう。

キャリアアップによる退職であることをアピールする

「資格取得を積極的にサポートしている御社で、ケアマネージャーの資格を取得してキャリアアップを叶えたい」「老人ホームのような入所型の介護施設で新たな経験を積みたい」など、前向きな退職理由であれば、採用担当へ熱意が伝わります。

転職後のキャリアを具体的に示すことで、今後の活躍を期待され採用に前向きに働く可能性も高まるでしょう。

マイナスイメージにつながる表現を避ける

「人間関係で問題があった」「夜勤や残業が多くて辞めた」など、面接官がマイナスなイメージを抱く退職理由は避けた方が良いでしょう。

人間関係に問題があった場合は「円滑なコミュニケーションが取れる職場で、スタッフ同士の連携を大切に働きたい」、夜勤や残業が多く続けられなかった場合は「業務の効率化に積極的に取り組む御社で、ご入居者様との時間を大切に介助業務にあたりたい」など、ポジティブな表現に変換することが大切です。

働きやすい職場を見つけるために

長く続けられる働きやすい職場を見つけるには、具体的にどういった点に注意すべきか確認していきましょう。

労働条件をしっかり確認する

求人情報を参考に、労働条件をしっかり確認します。雇用形態や給与、労働時間、福利厚生など希望の条件に合致しているかが重要なポイントです。

可能であれば、事前に職場を見学するのも良いでしょう。直接職場の雰囲気が確認できれば、転職してから「こんなはずじゃなかった」と、ギャップを感じる可能性も低くなります。

企業理念や経営方針を理解する

企業のホームページなどで、企業理念や経営方針を確認しておくことも重要です。介護に関する基本的な考え方が異なる会社で、長く働き続けることはできません。
利益や効率を重視し過ぎていないか、ご入居者様・ご利用者様に寄り添った介護サービスを提供している会社かなど、介護に関する考え方が自分に合っているかも、確認しておきましょう。
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まとめ

この記事では、介護職の主な退職理由や、退職理由を上手に伝えるポイントについて解説しました。

チャームケアでは、週休3日制や介護DXの導入をはじめとする、介護職の職場環境・労働環境の改善に積極的に取り組んできました。介護職で転職を検討されている方は、お気軽にホーム見学にお越しいただき、職場の雰囲気を感じ取ってください。

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