高齢者虐待防止の推進が令和6年度より義務化

2005年「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)が制定されました。高齢者に対する虐待を防ぐとともに、高齢者の利益および権利の擁護を目的としています。

高齢者虐待防止法が制定された背景には、文字どおり高齢者への虐待増加が挙げられます。

厚生労働省が行った「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」への対応状況に関する令和4年度の調査結果では、養介護施設従事者等による高齢者の虐待と判断された件数は前年比15.8%増の856件、相談・通報件数も前年比16.9%増の2795件と、いずれも過去最多件数が報告されています。

令和6年4月1日からは、全ての介護等サービス事業者への「高齢者虐待防止の推進」が義務化されました。

参考:令和4年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果プレスリリース

高齢者虐待防止の推進義務化の内容

高齢者虐待防止の義務化により、介護等サービス事業者に求められる取り組みは、以下のとおりです。
①虐待防止対策を検討する委員会の設置
②虐待防止のための指針の整備
③介護職員に向けた虐待防止に関連する研修の実施
④虐待防止施策の実施担当者の設置
 (12434)

高齢者虐待防止に対する具体的な取り組み

前述した高齢者虐待の未然防止につながる取り組みを、具体的に確認していきます。

①虐待防止対策を検討する委員会の設置

高齢者への虐待防止に関する委員会の設置と、定期的な開催が挙げられます。

委員会では、虐待が行われていないかを確認することはもちろん、将来的に虐待につながる恐れのある事例の共有や、普段行っている介助業務に潜む虐待のリスクなど、虐待を未然に防ぐための話し合いが行われます。

また、メンバーは管理者を含む幅広い職種で構成するものとし、虐待防止の専門家の積極的な参加を推奨しています。現場で働くスタッフの気づきは、虐待に関する認識のすり合わせにも役立ちます。

②虐待防止のための指針の整備

高齢者への虐待防止に関する指針や取り組みを整備し、現場の介護スタッフに理解しやすく共有するとともに付随するルールの遵守を徹底する必要があります。
虐待防止のための指針には、以下の内容を盛り込むことが求められています。
・事業所における虐待の防止に関する基本的な考え方
・虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
・虐待防止のための職員研修に関する基本方針
・虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
・虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
・成年後見制度の利用支援に関する事項
・虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
・ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
・その他虐待の防止の推進のために必要な事項

③介護職員に向けた虐待防止に関連する研修の実施

介護等サービスを提供する事業者は、虐待防止に関する基礎知識を修得する研修を行う必要があります。組織的に虐待防止の意識を醸成するために、研修は年1回以上実施することが重要です。
新入社員研修に盛り込めば、入社後早いタイミングで、虐待防止に関する自社のスタンスや取り組みの理解に繋がるでしょう。

④虐待防止施策の実施担当者の設置

虐待防止のための委員会の設置や指針の策定、研修の実施を確実に行うために、また責任を持ってやり遂げる意識を持つためにも、虐待防止施策専任の担当者を置く必要があります。
 (12436)

高齢者虐待防止推進の義務化に対する工夫・注意点

高齢者虐待防止推進の義務化に伴い、新たにさまざまな取り組みをスタートする企業や事業所もあったことでしょう。
以前から取り組んでいた企業等も含め、義務化されたことにより、これまで以上に真摯な取り組みが求められます。以下で必要な工夫や注意点を確認していきます。

限られた時間と人数で対応する工夫が必要

介護業界は人手不足が叫ばれて久しい業界でもあります。限られた時間と人数の中で、高齢者虐待防止に関して確実に対応していくためには、工夫が必要です。

なるべく幅広い職種の参加が理想の虐待防止施策を検討する委員会ついては、参加者のスケジュールを事前に調整しておくと、スムーズな開催が可能です。

また虐待防止に関連する定期的な研修についても、通常の一堂に会する形式だけでなく、オンラインでの開催やeラーニングを活用したり、その他の研修と同時開催にしたりと、効率的に行う方法を検討しても良いでしょう。

原因を明確にして防止策を検討する

そもそも高齢者への虐待は、介護業務の疲れやストレスに起因するものが大半です。

お一人お一人に丁寧に対応したいという理想がありながら、実際には時間に追われて理想とする介護サービスが提供できないとモヤモヤする方。認知症のご入居者様との意思疎通がうまく図れずイライラが溜まる方も。

万一、虐待が起こってしまった場合も、犯人探しではなく、起こってしまった背景に着目することが重要です。そのうえで、二度と発生させないためにどういった取り組みが必要かを検討します。

無理なシフトで負担がかかっている場合は人材の手当を検討する、ストレスで怒りがコントロールできない場合は、アンガーマネジメント研修を受講するなど、委員会等で提案してみても良いかもしれません。
 (12435)

チャームケアはご入居者様にも介護スタッフにも配慮

チャームケアは、ご入居者様だけでなく働くスタッフにも配慮し、高齢者虐待防止推進が義務化される前から、法令を遵守したホーム運営に取り組んできました。

いち早く、全てのホームで防犯カメラを設置することで、ご入居者様の安全性の確保だけでなく介護スタッフの業務負担の軽減を図ったり、DX化を進めご入居者様の快適な生活と介護スタッフの働きやすさを両立したりと、積極的に職場環境の改善を行っています。

介護職に興味がある方は、ぜひチャームケアが運営するホームへ見学にいらしてください。

※防犯カメラを全てのホームに導入した際の記事はこちら

関連する記事

関連するキーワード

著者