初任者研修と実務者研修の違い

最初に、初任者研修と実務研修の違いについて解説します。

初任者研修の基本情報

初任者研修とは、簡単に言えば介護における初歩的な基礎基本を学ぶための研修です。正式名称は「介護職員初任者研修」で、以前「ヘルパー2級」と呼ばれていた資格と同等ですが、同じ資格ではありません。

介護現場には無資格・未経験でも働けるところがありますが、初任者研修資格を取得すると、働ける場が増えるなどのメリットがあります。

実務者研修の基本情報

一方、実務者研修は介護の基礎基本に加えて、医療ケアなども含めた幅広い知識を学ばなければなりません。

正式名称は「介護福祉士実務者研修」で、かつて「訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修」と呼ばれていた1~3級の資格が一本化されました。

実務者研修資格を取得すると働ける場所が広がるだけでなく、サービス提供責任者としてやりがいの幅を広げられるメリットもあります。

入浴や食事などの日常生活サポートだけでなく、たんの吸引・経管栄養といった医療ケアを学んで実務に活かしたい人は、実務者研修の資格取得が必要です。

受講科目と勉強目安時間が異なる

上記の説明からもわかるように、実務者研修の方が学ぶべき内容が多く、勉強にも時間がかかります。
仮に初任者研修と同じようなスケジュールで実務者研修の勉強に挑むと、履修科目の多さに圧倒されてしまうかもしれません。

詳しくは後述しますが、実務者研修の勉強時間は初任者研修より300時間以上かかると覚悟した方がいいでしょう。
勉強にとりかかる前に、実務とのスケジュール調整をしておくことをおすすめします。

合格ポイントが異なる

初任者研修は、カリキュラム終了後に筆記試験を受けて、合格したら資格取得となります。
一方、実務者研修は座学よりも実務中心で、合格判断基準も実務内容です。

知識面で実力を知れるのが初任者研修だとすると、実務レベルを測るのが実務者研修と言えるでしょう。

実務者研修の合格を決めるのは、所属しているスクールや介護施設なので、どこに所属しているかも合格を左右するポイントです。

初任者研修と実務者研修の共通点

上記で初任者研修と実務者研修の違いについて解説しました。
初任者研修と実務者研修は全くの別物というわけではなく、いくつかの共通点があります。

ここでは初任者研修と実務者研修の共通点について4つ紹介します。

厚生労働省に関する資格であり、国家資格ではない

初任者研修も実務者研修も、どちらも厚生労働省に関する資格であり、国家資格ではありません

初任者研修は厚生労働省認定の公式資格で、修了試験に合格しなければ資格取得となりません。
実務者研修は厚生労働省が指定した施設で必要な知識や技能を身に付けることで、資格取得となります。

合格かどうかを決めるのはスクールや所属する介護施設なので、資格取得のサポート体制が整っている所を選ぶといいでしょう。

共通科目がある

初任者研修と実務者研修には、以下の9つの共通科目があります。

初任者研修と実務者研修の共通科目

  • 人間の尊厳と自立
  • 社会の理解Ⅰ
  • 介護の基本Ⅰ
  • 生活支援技術Ⅰ
  • 生活支援技術Ⅱ
  • 認知症の理解Ⅰ
  • こころとからだのしくみⅠ
  • 生活支援技術Ⅰ
  • 介護課程Ⅰ


これらの9つは初任者研修の全科目です。
つまり、初任者研修の資格を取得しておけば、実務者研修の科目のうち9つは免除されるということです。

まずは狭い範囲をしっかり学びたいという人は、最初に初任者研修を受講するといいでしょう。

受講料を払って自主的に勉強しなければならない

初任者研修と実務者研修では、受講料や必要とされる勉強時間に違いはあれど、自主的に勉強する気持ちがなければ、資格取得は難しいでしょう

資格取得の可能性をアップさせたい場合、所属するスクールのサポートを上手く活用してください。学習サポートだけでなく、補助金を出してもらえるケースもあります。

また、どちらも数ヶ月間にわたり勉強する必要があるため、資格取得までの計画を立てておきましょう。序盤に勉強時間を詰め込みすぎると、途中で挫折してしまう可能性もあります。

無理なく業務と両立でき、継続できるように計画することが大切です。

仕事のモチベーションアップに繋がる

介護の仕事を極めたい人は、どちらの資格も取得しておいて損はありません。

初任者研修と実務者研修はそれぞれ取得すると、働ける施設や立場が広がります。
また、資格保持によって給料アップになる可能性もあるので、現在の収入を上げたい人にもおすすめです。

初任者研修・実務者研修 どちらから取得する?

結論から言うと、初任者研修と実務者研修はどちらからでも取得できます。
初任者研修が基礎基本、実務者研修が応用という点から、初任者研修を修了しなければ実務者研修の資格を取れないと思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。

どちらからでも取得可能ですが、以下の3つのポイントから順番を考えることをおすすめします。

時間

初任者研修は9科目で、勉強時間は130時間が目安です。一方、実務者研修は20科目で勉強時間は450時間が目安とされています。

1日あたり2時間の勉強とすると、初任者研修は約1ヶ月、実務者研修は7ヶ月以上の時間を確保しなければなりません。

どのくらいの勉強時間をかけられるかを考慮し、どちらの資格から取得したいかを考えましょう。

コスト

初任者研修の受講料は10万円以下で受けられるケースが多く、実務者研修は無資格の場合14万円から22万円ほどになります。
ただし、実務者研修は初任者研修修了済みであれば一部科目が免除となり、受講料も安くなります。

また、スクールや介護施設によってコスト面のサポート体制が異なるので、どのくらいの受講料になるかはあらかじめ確認しておきましょう。

知識量・技能

現時点での知識量や技能によっても、どちらから取得すべきかを考えましょう。

今の時点でまったく介護の知識や技能がない場合、いきなり実務者研修を受講しても大変に感じられるかもしれません。

実務者研修は基礎基本だけでなく医療に関することなど幅広く勉強する必要があるので、高いモチベーションがなければ挫折してしまう可能性もあるでしょう。

ゼロから介護を学びたい人は、初任者研修から受講することをおすすめします。

反対に、現時点で一定の知識やスキルがあれば、初任者研修を修了していなくても、実務者研修からの資格取得を狙えるでしょう。

こんな人には初任者研修がおすすめ

ここまで初任者研修と実務者研修との共通点や違いについて解説しました。
「自分はどちらを取得すればいいのだろう」と迷ったら、以下の特徴に当てはまるかチェックしてください。

以下の3つに当てはまる人は、初任者研修の資格取得がおすすめです。

無資格から介護職を目指す人

初任者研修は、これから介護業界を目指す人や経験値が浅い人でも受けられる資格です。
実務経験も不要なので、介護業界の一歩目の資格として向いています。

介護には介護付有料老人ホームなど無資格でも働けますが、住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などは初任者研修以上の資格がなければ働けません。

無資格から介護業界でのステップアップを狙う人は、まずは初任者研修がおすすめです。

万が一最後の筆記試験で不合格になっても、追試験があるので、すぐにリカバリーできます。また、初任者研修の筆記テストの難易度はあまり高くありません。

介護の基礎的な知識を学びたい人

初任者研修は、介護の基礎的な知識や、食事・入浴・排泄サポートなど介護スキルを学べます。

仕事で活かせるのはもちろん、家族や知人などプライベートの介護に興味がある人にもメリットがあります。介護業界での実務経験も不要なので、「将来的に介護業界に進みたいので、今のうちに基本的な知識を学んでおきたい」という人も、資格取得しておくとよいでしょう。

資格取得にかかる時間や費用を抑えたい人

初任者研修にかかる勉強の目安時間は130時間です。頑張れば1ヶ月以内の取得も可能なので、すぐに資格を取得したい人にメリットがあります。

また、受験費用も10万円以下と、実務者研修に比べると高くありません。

資格を取得してキャリアや収入アップを狙う人は、時間や費用を抑えられる初任者研修がおすすめです。

こんな人には実務者研修がおすすめ

一方、以下の3つの特徴に当てはまる場合、いきなり実務者研修の資格取得をおすすめします。

介護福祉士を目指す人

国家資格である「介護福祉士」になるには、実務者研修の修了が必須です。

介護福祉士とは、日常生活を送るのが困難な人に対して、入浴や食事などのサポートをする仕事です。
介護業界で高いレベルを目指したい人は、介護福祉士を検討しましょう。

国家資格ということもあり、介護福祉士の資格を持っている人は、初任者研修や実務者研修の資格を持っている場合と比べて収入が高い傾向にあります。

厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、平均年間給与額は以下の通りです。

厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」

  • 無資格:271万円
  • 初任者研修:300万円
  • 実務者研修:307万円
  • 介護福祉士:328万円


無資格と比べると約60万円も年収に差が出るので、収入アップの面から見てもモチベーションアップになるでしょう。

初任者研修を修了してから実務者研修の勉強を開始するのもいいですが、少しでも早く介護福祉士を目指す人は、いきなり実務者研修にチャレンジするのも一つの手段でしょう。

初任者研修を修了しただけでは介護福祉士にはなれないので、時間短縮という点では、最初から実務者研修だけを受けた方がいいかもしれません。

介護の責任者として働きたい人

実務者研修を修了すると、「サービス提供責任者」になるチャンスを獲得できます。
サービス提供責任者とは、介護事業所に必ず配置しなければならない職業のことです。

サービス提供責任者になると仕事の範囲や責任は増えますが、キャリアアップや収入アップに繋がるチャンスは十分にあるでしょう。

さらに、「訪問介護サービス利用者40名に対して1名以上サービス提供責任者の配置」が義務付けられているため、将来的に安定して働きたい人にもサービス提供責任者という立場はメリットがあります。

介護職員が実務者研修を修了してサービス提供責任者になれば、訪問介護サービス計画の作成やヘルパーへの教育、事務作業なども請け負うことができます。

実務内容は多くなりますが、その分幅広く携わることができます。早めに実務者研修の修了を目指しましょう。

時間やお金をかけても幅広い知識を身に付けたい人

実務者研修には450時間の勉強時間が必要です。また、科目は20個と幅広いため、普段の仕事と合わせて効率的に勉強しなければなりません。

反対に、現時点で時間やお金に余裕があり、じっくり幅広い知識を身に付けたい人は実務者研修を受けた方がいいとも言えます。

実務者研修の勉強にかかるお金は、現時点でどのような資格を持っているかによって異なります。

無資格で受講する場合は22万円程度かかるケースもありますが、介護職員基礎研修の資格を所持している場合は6万円以内で受けられるケースもあります。

実務者研修は初任者研修に比べてコストがかかる傾向にあるため、勤務先の資格取得支援などの補助金制度などをうまく活用して、できるだけ抑えましょう。

チャームケアは資格取得支援が充実

ここまで初任者研修と実務者研修の違いや共通点、資格取得がおすすめな人などについて解説しました。

両者に難易度や勉強時間の違いはあれど、どちらもしっかりと勉強しなければ資格取得できないという点には違いはありません。
特に、現職と並行して勉強する場合、本業に支障をきたさない範囲で学習する必要があります。

仕事も勉強も両立したい、資格取得のための環境が整っている職場で働きたいという人には、チャームケアがおすすめです。

チャームケアには様々な福利厚生があり、そのうちの一つに資格取得支援制度があります。
受講料の補助金というコスト面のサポートに加え、実習のためにシフトを調整してくれるなどの環境整備もあるので、仕事と資格勉強の両立に悩んでいる人でも心配ありません。

チャームケアの責任者は、スタッフの資格取得に対して積極的に応援する姿勢があるので、気兼ねなく勉強に励めます。

働きながら効率的に資格取得を目指したい人は、チャームケアをチェックしてくださいね。

まとめ

今回の記事では、介護職員初任者研修と実務者研修の違いについて解説しました。
初任者研修と実務者研修には受講科目や勉強時間の目安、合格のポイントなどの違いがあります。

一方で、国家資格ではない点や、資格取得で働ける場所が広がる点、キャリアや収入アップによるモチベーションアップに繋がる点などは共通していると言えるでしょう。
初任者研修と実務者研修はどちらから取得しなければならないという規定はありませんが、基礎的な知識からじっくり学びたい人は初任者研修から、サービス責任者や介護福祉士を目指す人は実務者研修から受講することをおすすめします。

初任者研修も実務者研修も、どちらもサポート体制が整った環境で勉強することが大切です。

受講料の補助金が出たり、資格取得のためにシフト調整ができたりするチャームケアは、働きながら資格勉強をしたい人にぴったりです。

チャームケアが気になる人は、以下のリンクから会社概要や福利厚生をチェックしてくださいね。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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