アートプログラムについて

アートギャラリーホーム事業は「育てる(作品の買上と継続的支援)」「発信する(作品展示)」「学ぶ(アートプログラム)」の3つの柱で構成されています。

※アートギャラリーホームについての詳細はこちら

チャームケアでは、2014年からこれまでに延べ約1,500点に及ぶ優れた作品をホームに展示してまいりました。
2021年9月より、3つのうちの「学ぶ」を構成する「アートプログラム」をリニューアル。
いわゆる美術教室のようなレクリエーションの一つではなく、若いアーティストとご入居者様をつなぐ、アートを通じた「コミュニケーションプログラム」と位置づけました。
アートギャラリーホーム事業の活動当初より作品募集に参加されてきた、画家・小林大悟氏をアートコミュニケーターとしてお迎えしてアップデートしました。
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本プログラムでは、若いアーティストへの継続した支援と、ご入居者様のQOL向上のために、双方の「学び」を重視しています。
さらには、地域交流はもちろん、スタッフへの啓蒙も目的となっています。

今後は、日本画、油絵、染色、版画、工芸など多分野にわたって制作活動に日々励んでいる若いアー ティストの方々にもご参加いただき、様々な企画を準備中です。

※アートギャラリーホーム事業関連のインタビュー記事はこちら!

ホームを飾る作品を提供して7年

――まずは自己紹介からお願いします。

小林:
小林大悟です。現在、フリーで美術・アートをメインに活動しています。

チャームケアさんとのご縁は、私が大学卒業直前の2014年3月に、大学の先生(当時の助手)を通じてお声がけいただき、チャームスイート新宿戸山に作品を提供させていただいたこと。
気がつけばチャームケアに関わらせていただくようになって7年も経ちますね。
「舞踏」制作:2020年 サイズ:91×116,7cm

「舞踏」制作:2020年 サイズ:91×116,7cm

その後も何度もご依頼いただき、7年間で各ホームに私の「成長の過程」を納めさせていただいているような感覚です。
私の作家人生にとって、チャームケアさんはかけがえのない存在です。

越田:
人材開発課の越田直司です。
私が普段関わっている採用の中で感じていることなのですが、介護を目指す学生さんには、毎年芸術系出身の方が一定数いるんです。

絵を描くことやバンド活動など、何かを表現することと、介護の仕事にはどこか親和性があるような気がしています。
表現の仕方やベクトルが、人に向いているか、作品に向いているかという違いなのかな。
このアートプログラムをきっかけに、さらに多くの学生さんや求職者の方の元へ、チャームケアの魅力が広まっていくといいなと思っています。

菊水:
首都圏事業部・広報ブランド推進課の菊水尚です。現在アートプログラムを担当しています。

小林さんにはこれまで、アートギャラリーホーム事業の「育てる」「発信する」に該当する部分でお声がけし、ホームの雰囲気に合う、素敵な作品を提供していただいてきました。

小林さんは、子どもたちにアートを教えるお仕事もなさっているんです。今年の4月、小林さんの個展に私が足を運んだとき、小林さん個人の作品だけでなく、障害を持つ子どもたちと一緒に作った作品も展示されていました。
アートというと、一人で黙々と…というイメージが強かったので、人と関わりながらアートを追及されている小林さんの姿、作品に感銘を受けました。
そこで、アートプログラムの講師としてもご協力いただけませんか?とお願いしました。

小林:
おっしゃるとおり、以前は私も人と会話することが苦手で、個人で創作活動をしていました。
しかし、作家活動を進めていくうちに、人と関わりながら制作したり観賞したりと、幅広く芸術に関わるようになりました。

個展の後、菊水さんからアートプログラムのお話を伺い、とても嬉しく思いお引き受けすることにしました。

アートを通して「人」と交わる

――アートコミュニケーターの役割を教えてください。

小林:
アートコミュニケーターとは、2012年より始動した東京都美術館と東京藝術大学の連携事業「とびらプロジェクト」によって輩出された、美術(アート)を介した、幅広い意味での「コミュニケーション」を探求する人材のこと。

私は大学卒業後、とびらプロジェクトのメンバーとして3年間活動し、絵を前にした対話型の観賞会やワークショップについて学びました。
どうしたら美術館をもっと楽しんでもらえるか、作品をより豊かに観賞してもらえるか、という考え方です。

しかし当時は、今よりもっと人前に出るのが苦手で、誰かとコミュニケーションを取ることへの苦手意識がありました。
そのため、プロジェクト卒業してからしばらくは、自分の作家活動と専門学校などで美術の講師の仕事をしていて、アートコミュニケーターとしては活動していなかったんです。

ですが、講師の仕事の関係で人前に出る機会が増え、次第に人前で話すことへの抵抗感が消えていきました。
同時に、美術は講師が一方的に「教える」ものではなく、双方向に学びがあり、フラットな立場でものを作り、作品を楽しむことであると、アートコミュニケーターの役割の重要性を再認識しました。

笑顔とお話が絶えず、ご入居者様からも大好評!

――実際の取り組みの内容と、ご入居者様の反応や感想について教えてください。

菊水:
第1回アートプログラム「銀箔 変色創作」は、小林さんと日本画家・竹原美也子さんにご協力いただき、チャームプレミア代々木初台にて開催しました。

今回のプログラムでは、23名のご入居者様が参加されました。
プログラム初日は約1時間程度で作品を制作し、2日目は参加者の皆様の作品、小林さん・竹原さんの作品を観賞する「観賞会」を行いました。
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小林:
事前にホームに打ち合わせに伺った際、普段のレクリエーション等での作品を見せていただいたんですが、質の高い作品を作られていて驚きました。

どうしても、作品そのものだけでは、お上手な方と苦手な方が出てきてしまいます。
そのため、作品を味わい、上手い・下手ではなくそれぞれに良さがあることを知ってもらうための観賞会をご提案・実施させていただきました。

菊水:
チャームプレミア代々木初台は、首都圏のホームの中でも、ご入居者様がダイニングに集まって過ごされることが多い、活気のあるホーム。
そのためご参加くださったご入居者様は積極的でお話好きな方が多く、プログラムはとても盛り上がりました。

少人数でゆっくりご覧いただくために、1組30分で予定していましたが、ご自分の観賞会が終わってもそのままライブラリーコーナーに残られて、次の会も引き続き参加される方もいらっしゃいました。
また、お母様の画集(!)をお部屋から持ってこられて、見せてくださる方もいらっしゃったんですよ。
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越田:
観賞の時間を設けることで、普段作るのが得意ではない方も、作品を見た感想やアイディアで活躍できますし、脳の活性化にとってもよい取り組みですね。

小林:
誰しも自分の作品に対しては自信がなく恥ずかしいと思うことが多いんですが、人の作品に対しては素直に褒めたり、いいポイントに気が付くことができるんです。

次の取り組みに向けて、ご入居者様のモチベーションを高めるためにも、自分に自信を持つためにも、観賞はとても大切な時間であると感じました。

菊水:
参加されたご入居者様は皆様、本当に喜んでおられて、「小林先生、またいらしてね」「次もまた楽しみね」等とお話してくださいました。
実は鑑賞会のあとも、しばらくライブラリーコーナーに展示していたんですが、「片づけると寂しい」という声もあったそうですよ。
それから、ご家族様にも見ていただくことができ、好評をいただきました。

小林:
物を作る事の利点は、作品を残すことができるということ。

ホームにご入居されてからも、いろんなことにチャレンジし、楽しい時間を送られたと振り返ることができるのは素敵ですよね。
作品や、観賞の際のお言葉を、何かしらの形で残していけるように今後も工夫していきたいです。

アートプログラムのさらなる発展・成果を目指して

――今後のご予定や目標を教えてください。

菊水:
アートプログラムは一時的な取り組みではなく、継続していくことに意味があると捉えています。
今回とても好評だったため、第2回もチャームプレミア代々木初台で実施できるよう計画中です。

ご入居者様にご満足いただけたのは、とても嬉しいことですが、それだけでなく成果もきちんと出していきたいですね。
具体的には、アートプログラムに参加することで、QOLの向上があった・認知症の改善につながったなどが証明されるのが理想です。
ホーム長とも協力し、どのように成果を図っていくか検討中です。

小林:
第2回以降も、他の作家さんとコラボして進めていく予定です。
自分だけが講師と固定化するよりも、いろんな作家さんが関わることで豊かな時間・プログラムになり、成果も出てくると考えています。

例えば、制作過程のパートは他の作家さんにお願いして、司会進行や観賞の部分は私が関わるなど。
自分のアートコミュニケーターとしての役割を果たしつつ、より良く面白いものにチャレンジしていきたいですね。

菊水:
そうですね。作家さんお一人だけだと、プログラムを広げていくことが難しいと思うので、小林さんのようなアートコミュニケーターの方に核になっていただけると心強いです。

アーティストを支援し、豊かな社会へ

――アーティストを「育てる」ための今後の展望を教えてください。

菊水:
今まで、ホームのオープン等の際に作品を納めていただいた作家さんはたくさんいらっしゃいます。
今後は作品のご縁をきっかけに、継続的にアートプログラムに関わっていただけるといいですね。
チャームケアの事業を盛り上げていただくと同時に、アーティストの方々の支援をしていきたいと考えています。

※これまでのアートギャラリーホームについてのインタビュー記事はこちら!
小林:
私自身、7年間に渡りお声がけいただき、作品を求めていただけるのは、大きな励みになりました。
自分の作家人生を磨く意味でも、他の作家さんとコラボしながら、アートプロジェクトで良い循環を生み出していきたいですね。

他の作家さんと展示会で一緒になることはあっても、一緒に企画を実施するチャンスはあまりないものです。
今までと違う関わりの機会となるため、自分にとっても刺激になると期待しています。

越田:
どんな才能のある方も、アーティストとして自立して生活していくことは、自分一人の力では難しいものですよね。
チャームケアに関わる作家さんは皆さん、とても素敵な感性を持っておられ、ご入居者様からも人気が高い作品を描かれています。
魅力的なアーティストが独り立ちされるまで、寄り添い支援することは、社会的にも必要なことだと考えています。

――ありがとうございました!

画家・小林さんの今後のご予定について

今回インタビューにご協力いただいた小林さんが参加される、ヘルツアートラボのイベント情報はこちら
一般の方も参加できる制作講座や作品鑑賞イベントを実施される予定です。
「アートコミュニケーター」に関心がある方はぜひ、ご参加下さい。
その他小林さんの個展情報等は、以下の小林大悟作家公式サイトをご覧ください。

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