データで見る介護士と腰痛の関係

独立行政法人 労働者健康安全機構が発表した「介護職員における腰痛の頻度、特徴、画像診断の研究と予防対策」では、
アンケートを行った介護職152人のうち、9割が腰痛を感じたという結果でした。

施設別に見ると、通所介護(訪問介護・デイサービスなど)に比べて、老人ホームなどの入所系施設の現場で働く方が腰痛を訴える割合が高くなっています。

「職場における腰痛に関する日本国内の疫学調査」では、介護職が腰痛を訴える割合は高くなっています。(下記表)
業種 腰痛を訴える方の割合
建設 29%
事務 42~49%
看護 46~65%
介護 63%
清掃 69%
運輸  71~74%
厚生労働省の「社会福祉・介護事業における労働災害の発生状況」によると、社会福祉施設で起きた労働災害のトップは、動作の反動・無理な動作などによって起こる腰痛となっています。

データをもとに客観的に判断しても、介護職は腰痛になりやすいと言えるでしょう。

介護で腰を痛めてしまう5つの原因

腰痛は、いくつかの要因が重なることで起きると言われています。

代表的な5つの要因を紹介していきます。
ご自身に当てはまる点がないかチェックしてみてください。

腰痛の原因1.|介助の動作

介助の際の動作には、腰に負担のかかりやすい姿勢が含まれています。
たとえば、以下のような動作が例として挙げられます。

◆腰をひねる動作をする(食事介助など)
◆中腰や前かがみの姿勢になる(シーツ交換、おむつ交換、体位交換など)
◆運ぶ・押す動作をする(移乗介助や車いすを押すときなど)
◆長時間同じ姿勢でいる(立ちっぱなし・入浴介助など)

シーツ交換ではなるべく中腰にならないようにベッドの高さを上げたり、食事介助をする際は正面に座って腰をひねる動作を避けるなど、心掛けることで腰への負担を軽減できますよ。

腰痛の原因2.|心身のストレス

腰痛はストレスも深く関係しています。

めまいや肩こり、睡眠不足など身体面のストレスや、
精神面のストレスが高い方は、腰痛を訴える方が多いという統計結果が出ています。

介護職は勤務体制が不規則になりがち。
腰をかばおうとして、かえって過度な動作になりやすいことにも、注意が必要です。

心身のストレスは腰痛を悪化させ、長引かせる原因になります。
※介護職のストレスの原因と対策についてはこちらの記事をご覧ください。(↓)

腰痛の原因3.|体格など介護士の個人的要素

年齢・性別・体格・筋力・経験といった、人それぞれに異なる個人的な要素。
椎間板ヘルニアなど疾患をお持ちの方や、経験が浅い方は腰痛になりやすいです。

後述するボディメカニクスを活用することで、腰にかかる負担を軽減することができます。

腰痛の原因4.|介助時の職場環境

介助を行う現場・職場の環境が、腰痛に影響を与えることがあります。

スペースが少なく、無理な姿勢を取らざるを得ない場所での介助や、寒く冷える部屋、腰に振動を与えやすい床など、外的要因で腰痛が引き起こされる場合があるからです。

腰痛の原因5.|被介護者の個人的要素

ご利用者様・ご入居者様の体格や、障害や疾患、残存機能、認知状態などが腰痛の要因になりえます。

また、介護スタッフとご入居者様とのコミュニケーション不足も一因です。
ご本人様の協力が得られず、かえって怖がらせてしまうなど、余計な力が必要になります。

【腰痛対策】予防のために意識したい4つのポイント

腰痛を予防するため、悪化させないために意識したいポイントを4つご紹介します。

腰痛予防のポイント1.|ボディメカニクスを活用した方法を実践

ボディメカニクスを活用すると、少ない力で動作が可能です。
無理な姿勢や力任せでの介助を避けるためにも、知っておきましょう。

ボディメカニクスを活用した介助のポイントは以下のとおりです。

◆自分の体重を支える基底面積を広くとる
◆重心を低くする
◆持ち上げず、水平移動を心掛ける
◆体を近づけ、ご利用者様・ご入居者様と自分の重心を近くする
◆自分の肘や膝を支点に、遠心力を利用する(てこの原理)
◆ご利用者様・ご入居者様に腕・足を曲げて小さくなっていただく
◆足・腰・背中の大きな筋肉を一緒に使う

チャームケアでは、介護技術に関する研修を定期的に行い、実践できるようにしています。

腰痛予防のポイント2.|福祉機器の利用・移乗時の環境を見直し

リフト・スライディングボード・スライディングシートなど福祉用具を使いましょう。

福祉用具を活用すると、安全性も高まりますし、体への負担も減りますよ。

また、スペースが取れず介助がしにくい場合は、周りの状態を見直してみましょう。
家具の位置を変える、整理整頓する、車いすの通る通路を広げる、段差を減らすなど、すぐに改善できることもありますよ。

※デザインはもちろん、スタッフの動線を意識したチャームケアのホーム作りのこだわりをご紹介しています。(↓)

腰痛予防のポイント3.|ご利用者様・ご入居者様にご協力いただく

ご利用者様・ご入居者様の残存機能を正しく見極めることも大切です。
定期的なアセスメントを行い、介助の際に頭に入れておきましょう。

介助の際にご本人様に力をいれていただくことが可能なら、負担は軽減できます。
ご本人様がどこまで動けるのかを把握し、「今から横に動きます」「動くのをお手伝いしますね」といった声掛けをし、コミュニケーションを取りながら介助しましょう。

ご利用者様・ご入居者様の自主性を尊重するためにも、気を付けたいポイントですね。

※こちらの記事では、ご入居者様の自主性について触れています。(↓)

腰痛予防のポイント4.|適度な休憩をとる

長時間同じ体勢にならないよう、適度な休息が必要です。

レクリエーションや季節のイベントがある日も、休憩時間をあらかじめ組み込んでスケジュールを立てておきましょう。
介助や作業の合間に、3分だけ体を伸ばすなど、休息を意識するだけでも違いますよ。

労働基準法で、雇用主は労働者に休憩・休日を与えることが義務付けられています。
休みがとれない、休憩時間がない場合は、上司に相談してみてくださいね。

※チャームケアでは、広々とした休憩室をご用意しています。休憩・休日について気になる方はこちら。(↓)

腰痛予防にはストレッチや体操がおすすめ

腰痛予防には、ストレッチやエクササイズなど簡単な体操も効果的。
身体が固いと腰痛になりやすいので、筋肉をほぐし、血流をよくしましょう。

一番簡単なのは、前屈。息を吐きながら、ゆっくりと前屈していきます。
ポイントは、痛みを感じない範囲で行うこと。
痛む部分があるのに無理をして行うと、余計に悪化してしまうので注意してください。

腰痛を予防するための体操・ストレッチ方法について、チャームケアでは各ホームの休憩室などに掲示しています。

中央労働災害防止協会 介護事業・運送事業における腰痛予防テキスト作成委員会 引用

介護職で働くスタッフの方々一人ひとりが、日頃から腰痛予防を心がけられるように啓発しています。

座ったままできる!腰痛予防ストレッチ

[1]背もたれにもたれず、椅子の中央に座る
[2]両太ももの間に丸めたタオルを挟む
[3]腕を交差させ、肩に軽く沿わせる
[4]姿勢をキープしたまま、体の中心ごと左右にずらすようにゆっくり振る

【体を振るときのポイント】
※肩を下げない
※バランスが崩れそうな位置まで傾けて、一旦停止させる

介護職の腰痛は労災に認定される?

介護職の方が腰痛になった場合、労災として認定されるのか、気になる方も多いでしょう。

労災と認定されるには、大きくわけて2つの条件を満たす必要があります。

条件のひとつは、災害性のある腰痛であること。
仕事中に「突然の出来事で腰に急激に大きな負担がかかり起きた」、または「腰痛の基礎疾患や既往があり、腰に力がかかったことで悪化して起きた」と認められる必要があります。

もうひとつは、災害性の腰痛ではないものの、日々の仕事の中で負担がかかり起きた腰痛であること。

これらの条件を満たすと、労災として認定されます。
よくあるぎっくり腰は、日常動作でも起きる腰痛のため、仕事が原因だと認められない限りは労災に認定されません。

【まとめ】介護職を長く続けるために腰の負担を減らすことが重要

介護職を長く続けるために、腰痛予防は重要です。
最後にもう一度、コツをおさらいしておきましょう。

◆ボディメカニクスを活用する
◆ひねりや中腰など、腰痛の原因になる行動を避ける
◆声掛けを行い、ご利用者様・ご入居者様に協力していただく
◆福祉機器を活用し、動線の妨げになるものは動かす
◆ストレッチや体操を行う

仕事の性質上、腰への負担が避けられない場面もありますが、ちょっとした心がけや意識で未然に防げることも。

腰痛の悩みを抱えている介護職の方は多くいらっしゃいます。
一人で抱え込まず、先輩や上司に相談すれば、解決の糸口が見つかるかもしれませんよ。
痛みがつらい場合は、無理せずに病院へ行き、適切な治療を受けてくださいね。

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