「アセスメント」は介護における重要な項目

「アセスメント」は、介護職として働いていたり、高齢者福祉について学んでいると、よく耳にする言葉です。
しかし「アセスメントがどのようなことを指しているのか具体的にわからない」という方も多いのではないでしょうか?

アセスメントとは、何かを実施する前の計画立案の際に行われる評価のこと。
介護を行う際にとても重要な項目です。

今回はアセスメントの中でも「有料老人ホーム」で行われているアセスメントに重点をおいて解説します。
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アセスメントとは

「アセスメント」は、介護業界だけでなく、さまざまな分野・業界で使われている言葉です。人材マネジメントや、環境に影響のある建設プロジェクトなどでも用いられることがあります。

ここからは「アセスメント」という言葉の持つ意味を知り、介護業界で使われている「アセスメント」の意味を学んでいきましょう。

アセスメントは英語で「評価」「査定」の意味

「アセスメント」とは英語で「assessment」と書き、評価、査定、課税などの意味があります。

日本語として使われる際は、「対象を数値的、計算的、客観的な基準に基づき評価する」という意味で使われています。
客観的な評価を表すため、自己評価などは当てはまりません。

介護におけるアセスメントとは

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介護の中で使われる「アセスメント」は、ご入居者様に介護サービスを提供する際、どのようなケアが必要なのか、どんな希望(ニーズ)を持っているのかを把握・分析し、評価・査定することを意味しています。

介護でアセスメントが行われるタイミングは、計2回となります。ケアプラン立案の際と、介護サービス提供時に各事業所が作成する介護計画書(介護過程)立案の際です。

今回は、介護過程の中のアセスメントを中心に解説します。

ケアプランと介護過程の介護計画書の違い

  • ケアプランとは
  • 「介護サービス計画書」のことで、主にケアマネジャーが作成。
    (ご入居者様・ご家族様作成によるセルフプランでも可。)

    ケアプランは、介護サービスを利用するために必須の書類で、ご入居者様本人にとって必要な介護サービスの全てが記載されています。
    具体的には、ご入居者様の生活全般の課題、それに対する目標、具体的なサービスの種類・頻度、月のスケジュール、毎月の利用金額など。

  • 介護過程における介護計画書とは
  • ケアプランを元にそれぞれの介護事業所が作成する「個別サービス計画書(※)」のこと。
     ※介護サービスや事業所ごとに呼称が異なります。

    この介護計画書は事業所によっては、介護スタッフが行うこともあります。
    つまり、アセスメントはケアマネジャーだけでなく、介護に携わるすべてのスタッフが関わる可能性があると言えます。


    看護におけるアセスメントとは

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    看護の中で使われる「アセスメント」は、介護の中で使われる時と意味合いが少し異なります。

    看護では、患者さんの看護を行う過程を「看護過程」と言い、5つの段階に分けられています。
    そのうちアセスメントは第一段階で行われ、看護診断のための情報収集・整理の段階のこと。

    問診で得られた痛みなどの主訴等の主観的情報と、バイタルサインや検査結果といった数値化・視覚化できる情報の客観的情報に分けられます。

    これらの情報をもとに看護診断を行い、看護計画が立てられます。

    アセスメントを実施するタイミング

    介護におけるアセスメントは、ケアプランと介護計画の作成や見直しの際に行われています。

    有料老人ホームなどの居住系サービスや介護施設においては、ケアプランと介護計画をまとめてケアプランとして作成する場合が多いです。
    アセスメントのタイミングは、居宅介護支援と同様に、ご入居者様の心身状態の変化に応じて行います。

    チャームケアでは、おおむね3ヶ月~6ヶ月に1度アセスメントを行い、ケアプランの見直しを行います。
    施設介護は居宅介護と比べ、介護スタッフが密に接しているため、頻度が少なく設定されています。
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    対象はご入居者様・ご家族様

    アセスメントの際は「客観的な評価」を行うため、ご入居者様ご本人の状態だけを見るのではなく、生活歴やご家族様の状況、近隣住民等との交友関係や住環境、生活サイクルなどについても情報収集し、分析する必要があると言われています。

    そのため介護におけるアセスメントは、ご入居者様だけではなく、ご家族様にも行うのが一般的です。

    またご入居者様が他にも利用されている介護サービスや医療施設がある場合は、そこで関わる専門職が行ったアセスメント情報も得ることが重要です。
    時には地域で関わりを持っている民生委員や近隣住民などが対象となることもあります。

    ご入居者様ご本人だけでなく多方面から情報を取集することで、「本当に必要な介護サービス」を提供することができます。

    アセスメントのポイント

    アセスメントは、ケアプランや個別介護計画を作成する際に行われますが、ケアマネジャーや介護スタッフが一方的にケアを決定するものではありません。

    大切なのは、介護を必要としているご入居者様やご家族様のニーズやご希望を尊重すること。
    介護スタッフやケアマネジャーは、正しい情報を得て整理し、ご入居者様やご家族様と一緒に考えていく姿勢が必要です。

    また適切なアセスメントをすることで、ご入居者様やご家族様が気づいていない隠れたニーズを引き出すことも求められています。
    ご入居者様やご家族様の言葉をそのまま受け取るだけでなく、相手をよく観察するようにしましょう。
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    アセスメントシートは介護サービスの基本

    介護におけるアセスメントで収集した情報は、アセスメントシートに記入して整理していきます。
    このアセスメントシートは、ケアプランや介護計画を作る上で元となる情報なので、正確に記入しましょう。

    アセスメントシートの内容

    アセスメントシートは各所から得られた情報をまとめる段階からスタートします。
    その上で、アセスメント担当者が導きだしたニーズやその根拠、さらにご入居者様・ご家族様との対話から合意形成した内容を記載します。

    アセスメントシートを見れば、ご入居者様の心身の状態や置かれている状況、必要な支援が分かるようにしておくことが重要です。

    アセスメントシートの様式・種類

    アセスメントシートは、以下の7種類の様式のどれかを使用することが一般的です。

    しかし決められた様式があるわけではなく、ご入居者様の状態や事業所の特徴などに合わせて、独自のアセスメントシートを使用することも認められています。

    よく利用されているアセスメントシートの7つの様式

    • 包括的自立支援プログラム
    • 居宅サービス計画ガイドライン
    • MDS-HC方式
    • R4
    • ケアマネジメント実践記録方式
    • 日本介護福祉会方式
    • 日本訪問介護振興財団版方式


    どの様式も開発した機関によって特色が異なり、事業所によって使い分けられています。

    厚生労働省によると、施設サービスの事業所では、全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会、介護力強化病院連絡協議会が開発した「包括的自立支援プログラム」を採用している事業所が多く、特に特別養護老人ホームでは49.3%が採用しています。

    ちなみに、チャームケアは「居宅サービス計画ガイドライン」でアセスメントを実施しています。

    アセスメントシート作成のコツ

    最後に、アセスメントシートの作成の3つのコツをお伝えします。

    ご入居者様を中心に作成すること

    アセスメントシートに記入する際、多方面からの情報収集も大切ですが、ご入居者様から聞いた内容を中心に作成しましょう。

    介護サービスを受ける当事者である、ご入居者様ご本人のご意見が最も大切です。
    第三者から得た情報を中心に記入すると、適切な介護サービスの提供に支障をきたすこともあるため注意してくださいね。

    客観的な分析であること

    アセスメントシートを作成する上で重要なのが、客観的であること。
    ケアマネジャーや介護スタッフが記入する際、主観的な事実と客観的な事実を区別して書く必要があります。
    情報を整理し、多角的に分析するようにしましょう。

    誰が見ても分かるように記入すること

    アセスメントシートは、他のスタッフや関係機関の専門職が見る可能性があります。
    そのため、誰が読んでもわかりやすいように、正式名称で記入したり、5W1Hがわかるように書く必要があります。
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    アセスメントを行って介護サービスの質を向上させよう

    今回は、有料老人ホームにおけるアセスメントについて解説しました。
    アセスメントがどのようなものか、お分かりいただけたでしょうか?

    チャームケアでは、「高齢者の皆様が安心して生活できる豊かで実りある社会」を目指し、日々介護サービスの提供を行っております。
    「豊かで実りある社会の実現」のためには、質の高い介護サービスを提供し続けることが必要です。
    その前提となるのが、今回解説した「アセスメント」となります。

    アセスメントについてしっかり学び、ご入居者様やご家族様にご満足いただける介護サービスを提供していきましょう。

    この記事の監修・アドバイザー

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    大野世光(おおのひろみつ)

    2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
    介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
    チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
    教育研修室にてスタッフの教育を実施。
    2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
    介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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