医療行為とは

医療行為とは、医師や看護師、歯科医師などの国家資格を持つ医療従事者のみができる治療や処置のことです。
介護士は基本的に、医療行為を行ってはいけません。
そのため無資格で医療行為を行った場合は、「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」と医師法で定められています。

しかし介護の現場では、医療行為を必要とされる機会が多いため、介護士が例外で行える医療行為もあります。
介護士が行える医療行為をきちんと把握しておくことで、ご利用者様・ご入居者様を安心、安全にケアすることができます。

介護士が例外で行える医療行為

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保健師助産師看護師法という法律で、介護士が例外で行える医療行為が定められています。
以下のような医療行為は、介護士も行うことができます。
  • 耳掃除(耳垢塞栓の除去以外)
  • 爪切り(爪に異常がなく、糖尿病などの疾病に伴う専門的な管理が必要ない場合)
  • 口腔ケア(重度の歯周病がない場合)
  • 市販の浣腸器を用いた浣腸(ディスポーザブルグリセリン浣腸器の使用)
  • 自己導尿を保護するカテーテルの準備、体位の保持
  • ストーマパウチに溜まった排泄物の除去(皮膚に接触したパウチを除く)

介護士の方にとっては、普段から行っている業務も含まれているかもしれません。ひとつの医療行為の中でも、細かな条件が定められています。
また病状が不安定などの理由により、専門的な管理が必要な場合は、介護士が行えない医療行為と見なされることもあるため注意が必要です。

ご入居者様・ご利用者様の体調の変化をよく見て、気になることがあれば安易に自分で判断せず、医師や看護師、歯科医師の指示を仰ぎましょう。

参考:厚生労働省 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について

介護士が行える医療的ケア

医療的ケアとは、日常生活を送る上で必要な医療的生活援助行為のことを指し、医療従事者が行う医療行為とは区別されています。
以下のような医療的ケアは介護士も行うことができます。
  • 体温計を用いた体温測定
  • 自動血圧測定器による血圧測定
  • パルスオキシメーターの装着
  • 軽度の切り傷、擦り傷、やけどの処置
  • 湿布の塗布
  • 点眼薬の点眼
  • 内用薬の内服
  • 座薬の挿入
  • 鼻腔粘膜への薬剤噴射

上記のような測定作業や医薬品の使用は、医療的ケアに含まれるので、介護士が行っても問題ありません。
一方、医薬品の使用に関しては、以下の条件付きとされているので注意が必要です。
  • 患者が入院して治療する必要がなく、容態が安定している
  • 医師による容態の経過観察が必要ではない場合
  • 医薬品の使用方法に専門的な知識が必要ではない場合

研修を受けた介護士が行える医療行為

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前述した、介護士が例外で行える医療行為以外に、研修を受けた介護士のみが行える医療行為があります。
それは「喀痰(かくたん)吸引」と「経管栄養」です。

2012年4月1日に社会福祉および介護福祉法が一部改正されてからは、喀痰吸引等研修を修了し、認定特定行為業務従事者と認定されれば、介護士による喀痰吸引と経管栄養が行えるようになりました。
介護士は医師や看護師と連携し、安全を確保したうえで行うことができます。

喀痰(かくたん)吸引

喀痰(かくたん)吸引とは、高齢や病気により自力でたんを出すことが困難な方に吸引装置を使用し、口腔内や鼻腔内、気管カニューレ内のたんを吸引することです。
たんを外に出せないと呼吸困難や誤嚥性肺炎になるリスクがあるため、介護の現場では重要な医療行為になります。

経管栄養

経管栄養とは、高齢や病気により口から栄養を摂れなくなった方に対して、直接チューブで栄養剤を注入することです。
胃から入れる「胃ろう」、腸から入れる「腸ろう」、鼻から入れる「経鼻経管栄養」の3種類があります。
嚥下機能が弱くなった方も、胃や腸から直接栄養を摂れるので、誤嚥性肺炎のリスクも減らすことができます。

介護士が行ってはならない医療行為

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ご利用者様・ご入居者様の安全のために、介護士が行えない医療行為を把握しておきましょう。

インスリン注射

インスリン注射は糖尿病の治療法で、血糖値を下げるために注射をします。
本人や医師、看護師しか行えない医療行為に当たるため、介護士は行うことができません。
またインスリン注射の際に行う、血糖値の測定も針を刺すため、介護士が行うことは禁止されています。

ご利用者様・ご入居者様やご家族の中には「介護士はインスリン注射できる」と勘違いしている方もいらっしゃるため、頼まれることもあるかもしれません。
その時は安易に引き受けず、きちんとできない理由を説明し、納得していただきましょう。
注射を忘れないようにする声掛けや、注射を打つ際の見守りは、介護士にも行うことが可能です。

摘便

摘便とは自力で排便できない方や、一定の期間に便が出ていない方に対して、肛門に指を入れて排便を促す行為です。
医療知識を持たない人が行うと、腸壁を傷つけてしまい、出血に繋がることもある危険行為なので、介護士は行ってはいけません。

床ずれの処置

床ずれは褥瘡(じょくそう)とも呼ばれており、寝たきり状態の方や高齢者の方に多い症状で、圧迫により血液が通わなくなり皮膚組織が死んでしまうことです。
皮膚の一部が赤くなったり、ただれたりしてしまいます。
擦り傷や切り傷の処置とは異なるので、介護士が行うことはできません。

床ずれを予防するための体位変換は、もちろん介護士も行うことができますし重要な役割とも言えます。

点滴の管理

点滴は、皮膚に針を刺すため医療行為となり、介護士が行ってはいけません。
点滴袋の交換も医療行為となるため、医師や看護師しか対応できないので注意しましょう。

介護士は医療知識を身に付けることも大切

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介護士にできる医療行為は限られていますが、医療知識を身に付けることで、ご利用者様・ご入居者様へ質の高い介護を提供できます。

医療行為で介護士が行えること、行えないことが判別できることはもちろん、医師や看護師が処置する理由を把握できたり、ご利用者様・ご入居者様の体調の変化にも気が付きやすくなったりするでしょう。

医療行為を「自分にはできないこと」と区別するのではなく、普段から関心を持って仕事をしていると医療知識も身に付きやすくなります。

まとめ

今回は介護士が行える医療行為と、行えない医療行為を具体的に解説しました。
医療行為は、医師や看護師などの医療従事者しか行うことができませんが、例外として介護士が行える医療行為や、研修を受けた介護士が行える医療行為もあります。
介護士が行えない医療行為をしっかりと把握し、知識を身に付けることで適切な対応が取れます。

介護付有料老人ホームを運営する株式会社チャーム・ケア・コーポレーションでは、適切な介護が行えるよう、定期的な研修制度や資格取得支援を行っています。
介護士として正しい知識や技術を身に付けたい方、スキルアップやキャリアアップを目指したい方を後押ししてくれますよ。
気になった方は、ぜひ採用情報を確認してくださいね。

この記事の監修・アドバイザー

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大野世光(おおのひろみつ)

2017年10月1日、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションに入社。
介護系大手企業でスーパーバイザーなどを歴任し、
チャーム・ケア・コーポレーションのホーム長を経て、
教育研修室にてスタッフの教育を実施。
2022年7月から、教育研修部副部長 兼 介護DX推進課長に就任。
介護支援専門員資格、社会福祉主事任用資格を所持。

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